Sonicmania'04 - Vol.3 Evanescence/Korn







インドアフェスの場合、日中なのか日没後なのかを体感するのは難しい。しかし、時計の針が午後7時を差し、また食事エリアが閑散として対照的にフロアの密度が高くなってきたことで、外が夜になっていること、フェスが終盤に差し掛かったことがわかる。


 昨年のフジロックで日本デビューを果たしたエヴァネッセンスは、今年早々に単独再来日公演を敢行。そしてその締めくくりが、ソニックマニアとなる。まだ新人のはずなのだが、若さや初々しさよりも自信や風格が漂っていて、新人であるということを忘れてしまいそうになる。少し前にギタリストの脱退劇があったばかりなのだが、それがバンドの活動を揺るがすことはなく、すぐさま代役を入れてツアーを続行するというタフぶりだ。ソニックマニア出演はバンドのワールドツアー最終にも当たり、この後彼らは帰国して、グラミー授賞式に臨む。


 ヴォーカルのエイミーは、ベッキーを強面でマッチョにしたようなたたずまい。ハスキーな声質は相変わらずで耳に残り、ヘヴィーにしてポップなバンドサウンドと相俟って、高性能なヘヴィーロックワールドを繰り広げている。スマパンのカヴァー『Zero』は、原曲よりもかなり早いテンポで演奏された。しかし、中盤には穏やかなコーナーも。エイミーがエレクトリックピアノを弾き、ギターはアコギに持ち替えられ、バラード調の曲を演奏。続くはエイミーがひとりでエレピを弾きながら歌い、終盤になってバンドが加わり、静から動へと転換する曲。そして必殺『Bring Me To Life』も、イントロはエレピからだった。





 エヴァネッセンス終了直後から、場内には妙な雰囲気が漂い出した。マウンテンステージの前方ブロックは、既に入場規制が敷かれている。私はオーシャンステージの前方ブロックにいて、ここでエヴァネッセンスのライヴも観ていたのだが、反対側のブロックとは思えないくらい、人の密集度が高くなくなってきた。


 そして、ついにそのときは来た。実に5年ぶりの来日。5年ぶりだぜえ。まさかこんなに待たされるとは思わなかったし、それだけに飢餓感も強い。この5年の間にヘヴィーロックバンドも乱立するようになり、それぞれがサバイバルを強いられるようになってきた。しかし王者Kornは、苦悩や停滞の時期を経ながらも、メンバーチェンジすらすることなく生き延びてきたのだ。5人がステージに姿を見せたとき、その圧倒的とも言える存在感が場内を支配する。今まで出演してきたバンドには失礼かもしれないが、彼らは全てKornの前座でしかなかったのか。そう思わされるくらいの格の違いを目の当たりにし、場内は怒号と歓声に包まれる。





 まずは、新譜からのシングルでもある『Right Now』。ヘヴィーサウンドが最初から炸裂し、フロントラインを形成するドレッド4人衆(笑)が、それぞれ歌いまたは弾きながら首を振り、上半身を大きく揺らす。ヴォーカルのジョナサンだが、・・・肥えた?太った?その変貌ぶりにも、5年という歳月を感じさせる。また後方でリズムを支えるドラムのデヴィッドだが、ビデオカメラが密着しているようで、彼の姿が何度もスクリーンに映し出される。


 序盤からフルスロットルで、早くも『Got The Life』『Here To Stay』というシングルを連発。アメリカの市場はアルバムが主流で、シングルはアルバムのプロモーション的な意味合いしかないそうだ。しかしKornは、ヘヴィーロックを追求しながらもシングルの市場にも挑戦し続けて来たバンドだ。ともすれば、コアでマニアックな方向に突き進みがちなところを、絶妙のバランス感覚で乗り切っている。そしてその根底にあるのは、デビュー時から揺るがないと思われる、メンバーたちのこだわりではないだろうか。





 曲は新旧満遍なくセレクトされていて、中でも個人的に大感激したのが、ファーストの1曲目でもある『Blind』だった。乾いたシンバルの音にギターのリフがからむ印象的なイントロが、原曲よりもかなり長く、そしてしつこく延々と続く。しかしこのじらしはむしろ心地よく、そしてジョナサンのヴォーカルが炸裂したときの歓喜へとつながって行くのだ。私のいるオーシャンステージ側のブロックでさえ総モッシュ状態で、とすればマウンテンステージ側の方は、とんでもないことになっているに違いない。


 いつのまにかステージから姿を消したジョナサンが、バグパイプを吹きながら生還。これまたじらしにじらし、その間ジョナサンはステージを右に左にとゆっくり歩き、吹き続けながらオーディエンスの姿を確認せんとする。そして『Shoot And Ladders』となり、更にはヒットチューン『Freak On A Leash』~重要曲のひとつである『A.D.I.D.A.S』へという、怒涛のラッシュへ。バンドももちろん凄いのだが、オーディエンスの熱狂ぶりもハンパではなく、何よりKornを待ちわびていたファンがこんなにもいたということに、言い知れない感動を覚える。この場にいられたことだけで、ソニックマニアに参加してよかったと思える。








 こうして、終始テンションが落ちることなくライヴは続いた。本編に続いてアンコールを『Faget』『Somebody Somewhere』で締めくくったKorn。終演後、時計は既に午後9時半を回っていて、外に出るとさすがに気温は低く、風も冷たくて身に染みた。しかし、その寒さを打ち消して余りある大きな満足感と充実感が、心を暖かくしていた。

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(2004.2.4.)
















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