Nano-Mugen Fes.2006 2006.7.17:横浜アリーナ







アジアン・カンフー・ジェネレーションが、自らも1バンドとして各地のフェスティバルに参戦する一方、自主企画フェスとして開催を続けているのが、ナノ・ムゲン・フェスだ。回を重ねる毎に規模も大きくなり、6回目となる今年は横浜アリーナ2日間開催に。ラインナップも、アジカンと友好関係にあるバンドから、アジカンが音楽的に影響を受けたであろうバンドまでが組み込まれていて、かなり興味深い。個人的にはシルヴァー・サンとレンタルズを目当てとして、2日目の方に参加した。





入場

チケットには「青」「赤」「黄」「緑」といった刻印がされていて、この色別に入場時間が区切られていた。ゲートを通るときにひと揃いのパンフレットを渡され、この中にフェスの概要を記した冊子と、当日発表とされているタイムテーブルが入っていた。このタイムテーブル、首から提げられる小さなパス形式になっていて、フジロックやサマーソニックからアイディアを拝借したのかな、なんて思ったりもした。



オープニング

アジカンの伊地知と山田がMCを務め、簡単な注意事項が通知された後、ステージ上方の両サイドにあるスクリーンにて、フェスの歴史が紹介される。まずは過去5回の模様の概略が流されて、回を重ねる毎にアジカン及びこのフェスそのものが成長を遂げているのがわかる。そして今年開催分になると、出演バンドがひと組ずつじっくりと紹介され、ファンは自分目当てのバンドのときに大きな歓声を送っていて、これでこの日会場に集まったファンの層がだいたいわかった。



髭(HiGE)

5人編成で、ギターが2人いてうちひとりがヴォーカルも担当。ドラムも2人いたが、うちひとりはなぜか白装束にヒゲをつけて、ヴィジュアル的に少し目立っていた。ミディアム調の曲が多く、演奏も淡々としている。オープニングらしい威勢のよさがなくって、彼らがオープニングでよかったのかなと、ふと首をかしげたくもなった。ツインギター、ツインドラムなのに、音に厚みが感じられないのも物足りなかった。



Silver Sun

来日は、実に9年ぶりになるのだそうだ。アジカン喜多が登場して前フリをし、そして演奏がスタート。メンバーはスーツもしくはシャツにネクタイといった準フォーマルないでたちで、音はウィーザー・チルドレンというか、ギターを軸にしたポップでパンクな曲が多かった。しかし、ライヴにブランクでもあるのかと思えるくらい演奏がぎこちなく、そしてヴォーカルは高音では声をかすれさせていて、正直言って残念な出来に。



ストレイテナー

この日のベストアクト。もともと個人的に思い入れのあるバンドだが、いくらアジカンとは友達で、そしてこのフェスに何度も出ているとはいえ、バンドにとってはアウェーのはずだと思っていた。しかしアリーナのスタンディングエリアはほぼ埋め尽くされ、オープニングの『The Novemberist』から大モッシュ大会に。バンドは自身のツアー中で、各地を転戦してこの日に至っているので、かなりいい状態でステージに立てるはずだと予想してはいたが、それをはるかに上回る出来だった。全アクトを観終えて改めて感じたのだが、ホリエ、ナカヤマ、日向と、3人のひとりひとりが持ちうるポテンシャルが桁違いすぎるのだ。それがバンドとして融合し機能しているものだから、いいライヴにならないわけがない。


ラストの『Magic Words』になったとき、ドラムのナカヤマが動き出した。ドラムセットを飛び越えステージ前方に出てきたかと思うと、やがてステージを降りてしまい、中央部のスタンディングエリアに突入。オーディエンスに担がれてガッズポーズを取るが、それだけでは飽き足らず、今度は向かって右のスタンディングエリアに突入し、再び担がれていた。ステージ上では、ホリエと日向が演奏を続けつつも2人で笑いながら何やら会話していて、この光景全体が微笑ましかった。



The Young Punx

メインステージの右側に設置されている、DJステージが稼動。DJがひとりきりで卓上でレコードをかけたりスクラッチしたり、という感じかと思っていたが、DJに加え男女ヴォーカルにギターと、ほとんどバンドと言っていい編成。ヴォーカル2人は何度か衣装替えをし、DJステージのみならずメインステージの方にまで走って場内を煽り、そして場内にはグリーンのレーザー光線が飛び交い、と、かなりユニークで楽しめるステージだった。



ビート・クルセイダーズ

食事や休憩タイムに充てていたので、観たのは後半のみ。演奏はしっかりしていて、メロディも美しく、評価したいバンド・・・なのだが、この日も相変わらずMCが下品だった。他愛もないしゃべりや放送できない(書けない)ことばを連呼し、客にも強要し、これが個人的に物凄いマイナス。演奏に徹すれば、もっと引き締まった、もっと精度の高いライヴになるはずなのに。それをせずに下品に走るのが、彼ららしさなのかもしれないけど。



Waking Ashland

DJステージとは反対側の、メインステージ左に設営されたアコースティックステージにてライヴ。メンバーはピアノとアコギの2人で、しっとりとした美しいメロディが滑らかに響き、ツインヴォーカルのハーモニーもよし。ジミー・イート・ワールド以来のエモコアバンドという宣伝文句があるのだが、演奏を聴きながら、これ通常のエレクトリックだとどういうアレンジになるのかな、と想像をめぐらせた。「ゴハン ニ ショウユ カケル」などの、謎の日本語MCも連発(笑)。



The Rentals

アジカン後藤が前フリを務めた後、メンバー登場。総勢6名(うち女性3名)だが、途中からサポートのギターも加わって、最大7名に。もっとウィーザー色が濃いのかと思ったがさほどでもなく、キーボードやメロトロンなどを駆使した美メロの曲が際立った。フロントのマット・シャープを含め、ドラマー以外の全員が曲により楽器をチェンジするという職人ぶりを発揮し、現在のMumやブロークン・ソーシャル・シーンなどといったバンドの先駆け的存在なのだと痛感。終盤にはルー・リード『Walk On The Wild Side』のカヴァーを披露し、またラストでは、アジカンやビークル、ヤング・パンクスのメンバーがステージに登場して踊りまくるという状態に。



アジアン・カンフー・ジェネレーション

SEのストーン・ローゼズ『Driving South』が流れると同時にグリーンのレーザー光線が飛び交い、スタンド席まで総立ちになって軽く焦る(笑)。個人的には、2003年にファウンテンズ・オブ・ウェインの前座で観て以来なのだが、そのときは歌重視のように感じていたのだが、今の彼らは演奏重視のライヴバンドに変貌していた。1曲1曲が長尺で、イントロが長ければ間奏のインプロヴィゼーションも長い。バンドの顔はヴォーカルの後藤ということになろうが、サウンドの軸はギターの喜多で、もっと彼もしくは彼の指先がスクリーンに抜かれてもよかったはずだ。


アンコールではレンタルズの面々が登場し、コンピ盤に収録されているレンタルズの曲『Getting By』を共演。ラストではステージ前方に仕込まれていたマグネシウムが炸裂し、大団円となって終了。それはまた、このフェスが成功に終わったことも意味していた。








このフェスは、いろいろな意味でよくできている。アジカン単独公演はだいたいライヴハウス規模で行われていて、チケットは入手困難な状態のはず。よって、熱心なファンでもなかなか彼らのライヴを観ることができず、そうした人たちにとっての有難い場として機能している。また私などがそうなのだが、アジカンがチョイスする出演バンドがなかなかツボで、そうしたバンド目当てで参加して、結果的にアジカンを含む多くのバンドのライヴに触れることもできる。



会場が横浜アリーナなのも好条件で、自由に歌ったり躍ったりして楽しみたい人はアリーナのスタンディングエリアへ、のんびり/じっくり観たい人はスタンド席で、と、観る側にも選択肢ができている(私は終始2階スタンド席で観ていた)。屋内なので、天候や暑さの心配も対策も無用。飲食の出店も結構出ていたし、休憩スペースも用意されていた。トイレも豊富だ。JR新横浜駅から近いというのもミソで、もしかしたら新幹線で遠方から参加された方もいたかもしれない。



アジカンのライヴの最中に、ギターの喜多が、来年もぜひやりたいと言っていた。私自身は決して熱心なアジカンのファンではないが、フェスティバルが乱立している今の日本において、自分たちでフェスを立ち上げ、そしてやり続けようとする彼らの姿勢には共感できるし、もしまた機会があれば(つまりは、私の琴線に触れるアーティストのエントリーがあれば、ということになるが)また来てもいいかなと感じている。




(2006.7.23.)



















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