Fuji Rock Experience Vol.8 Chemical Brothers / Blur







 日没。そして2日目の第2幕。グリーンステージに設置された無数の機材。無数のスポットライト。そして、あのイントロが鳴り響く。



 ...Hey Girl!



 ...Hey Boy!



 ...Super Star DJ's...



 ...Here We Go!!!




ケミカル・ブラザーズだ!こちらもウッドストック参加組。個人的には元祖90'sテクノユニットであり、私が以後プロディジーやゴールディー、アタリやアンダーワールドなどを聴くきっかけとなった連中である。ステージ向かって左には大きなモニタースクリーンがあり、ステージ上の様子が映し出される。そして彼らのセットとして、ステージ後方にもモニターが設置されている。無数の電子音が響き渡り、無数の閃光がステージを彩り、そしてそれに合わせてモニターの映像も目まぐるしく変貌を遂げる。


『Block Rockin' Beats』へと絶妙の繋ぎを見せ、当然のようにモッシュビットも炸裂。グリーンステージが巨大なダンスフロアと化してしまった。私は思うのだが、こうしたクラブ・ミュージック、ダンス・ミュージック、テクノ・イベントなど、この系統は数百人クラスのライヴハウスでやるよりも、もっと広大な空間、もっと巨大なステージ、そうした中で放つ方が体感していて気持ちがいい。蛇足だが、アンダーワールドもグリーンステージでやってほしかった。








日中は6年ぶりにレイ・ディヴィスを見たが、ブラーを見るのも実に6年ぶりのことである。現在のUKトップの一角を担う存在として、フジロックへの出演はいよいよ来たか、という感じだ。メンバーこそ不動だが、この6年の間にブラーは大きく変貌を遂げた。私は勝手に感慨に耽りながら彼らの登場を待つ。


メンバーがステージ上に姿を見せる。デーモンは帽子にタンクトップ姿。アレックスはウッドベースを抱えている。来る、と思うと、あの荘厳なるメロディ。『Tender』である。ゴスペル調で、まるで教会で歌う賛美歌のような曲調で、果たしてこの曲が野外フェス映えするのか、と不安でしようがなかったが、それは吹っ飛んだ。「かーもん、かーもん、かーもーん」の大合唱となる。そしてノイジーなイントロで始まる『Bugman』、比較的かつてのブラーの香りが残る『Coffee & TV』と、新作『13』からの曲が立て続けに演奏される。


フジロックを前にして、私は『13』を繰り返し聴いた。混沌。難解。錯綜。そんなイメージである。『13』は過度期的作品だ。精一杯にあがき、そして一段高い次のステップにかけ登ろうとしている今のバンドのもがいている姿だ。私には、この作品がブラーのピークとは思わない。ピークは、もっと先にある。そして、今この場で『13』からの曲を淡々と演奏し続ける彼らの姿に、私は説得力を感じ、そして共感する。


ブラーのステージは3部構成を成し、第1部は『13』から、第2部は『Beetlebom』等割と最近の曲群。そして第3部はブラーの「顔」的曲群のオンパレードとなった。『Parklife』を、『Girls & Boys』を、そしてラストは『Song 2』。「ウーフー」が苗場に轟いた。これらの曲を見ることが出来た。聴くことができた。だけど、この流れは性急に思えた。つぎはぎのように思えた。最新作とそれまでの代表作を放つ、その融合感を感じることができなかった。会場を別世界に作り変え、オーディエンスを別世界へと誘うような興奮は、なかった。しかし、これはある意味当然のように思える。そしてその中には、現状維持に終始しない、進化しようとしている彼らの姿を見い出せるのだ。


(99.9.9.)
















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