Fuji Rock Experience Vol.6 Ray Davis / Skunk Anansie







最近はキンクスとして活動することの少ないレイ・デイヴィスだが、しかし、やはり私にとってはストーンズと並ぶブリティッシュ・ロックの最長不倒バンドであり、ザ・フーと共に唯一パンク・ムーヴメントに歓迎された"あの"キンクスのレイ・ディヴィスである。今回はサポートのギタリストとレイの2人だけのシンプルな構成。昨年のコステロ的存在か。夏らしく?、上下白いスーツ姿で登場するミスター・レイ。その手にあるアコースティックギターから爪弾かれた音色。それは、





『Lola』だ!




グラストンベリーの映像を見たところでも、『Lola』はかなり早めに演奏していた。しかし、しかし、まさか1曲目から来るとは思わなかった。たまらずステージ前方に向かって走り出す。アコースティックセットのためか、それともフジロックを見に来る客層には受けが今ひとつなのか、直前エリアでも人はまばらだ。おかげで前5列目くらいまで接近できたけど。個人的には93年のキンクス来日公演以来である。


アコースティック・ギターのピックを弾く音が緑の中に響いて澄み渡り、しわがれたミスター・レイの歌声が、まるで年代ものの熟成されたワインのように耳に染みる。そして、キンクス時代の黄金の名曲が惜しげもなく連発される。『All Day And All Of The Night』が!『Sunny Afternoon』が!更には『You Really Got Me』までもが!君たちはこういう曲が聴きたいんだろう?とでも言わんばかりに次々にたたみかけてくるミスター・レイ。ふと横を見ると、黒人セキュリティも体を小刻みに揺らし、笑みを浮かべている。モッシュ&ダイヴの激しいライヴのときはいかついしかめっ面でニラミをきかせている連中だが、そんな彼らもリラックスして楽しんでいるようだ。


この人はマンネリのように、壊れたレコードプレーヤーのように、キンクスナンバーを20年も30年も繰り返してきたわけではない。そのときそのときの時代性、そのときの自分のあり方、その間に厳然と存在する距離感を察知しつつ、若いファンに向けて、そして同時にキンクスやレイ・ディヴィスを支持し続けているファンに向けて、メッセージを込めて、優しさを込めて、歌っているのだ。その根底に見え隠れする逞しさ、懐の深さ。ラストは『Waterloo Sunset』。更にはアンコールまで!参りました、レイ先生。








 この日の朝、入場ゲート前の新星堂のテントでロッキンオンを購入したが、そこにはフジロックに出演するアーティストのCDがところ狭しと並べられていた。私は目を皿のようにしてあるバンドのCDを探す。が、ない。諦めて店員に尋ねてみるが、なんと1枚も置いてないとのこと。がーん。こんなことがあっていいのか。許されていいのか。そのバンドってスカンク・アナンシーのことだぜ。私のフジロック99、表メインがレイジなら、裏メインはスカンク・アナンシーだ。


フロントのスキンがぴょんぴょん跳ねるようにして姿を見せ、他のメンバーもぞろぞろと出て来てスタンバイする。ニューアルバム『Post Orgasmic Chill』のトップでもある『Charlie Big Potato』でスタート。圧倒的な音量。突き刺さるビート。パワフルで躍動感溢れるスキンのヴォーカル。そしてその動き。いきなりマイクスタンドをブン投げる。私はグリーンの最前からステージに熱い視線を浴びせ、プラスして体が自然に動いている。そら見たことか。このバンドはこんなに凄いのさ。


ギラギラしていて挑発的なスキンの目つき。着ているTシャツには大きく口を開けたタイガーがプリントされていて、それはそのままスキン自身を写す鏡のように思える。ギターの人ににじり寄り、なんとその人の乳首を吸うようなフリをしてみせる。バックのリズム隊がしっかりしているものの、やはりこのバンドの中枢はスキンに集約されていると言っていいだろう。ステージ向かって右側の、私のいる方に歩み寄り、そこでしばしシャウト。そしてなんと、ばっとステージを飛び降りてしまった。そしてモッシュの中に突入。一瞬埋もれたようになって姿が見えなくなるが、その後すぐにオーディエンスに担ぎ上げられるような格好になって姿を見せるスキン。その、文字通り?のスキンヘッドをぺしぺしと叩くオーディエンス。こらこら、やめんかい(笑)。


(99.9.8.)
















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