Fuji Rock Experience Vol.4 Rage Against The Machine







「We are Rage Against The Machine from Los Angels,California!!」




かつて、レッド・ツェッペリンのライヴでは頭から2~3曲演った後にロバート・プラントが「Good evening!」と言い放ち、オーディエンスもプラントのその一声を聞くことによってツェッペリンのライヴがまさに始まったことを実感するのだが、ザックのこのおなじみのMCもそれに通ずるだろう。いよいよレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの登場だ!私はグリーンステージのアスファルト後方に陣取っていたが、とてもじゃないがもう平静ではいられない。すかさずステージ向かって右の最前に向けて突進する。そしていきなりの『Bulls On Parade』!!!


2年前の天神山は強い雨と横風、そして霧の中でのレイジだった。そして今回。夜の銀世界。自然に囲まれた舞台。ヘッドライナーとなってのフジロックへの帰還。機は熟した。台風直撃の'97とも、東京という、ある意味日常の枠の中での'98とも違う、本当の意味での野外フェスが、その最初のクライマックスが、いよいよ放たれたのだ。





プリンスやパール・ジャムの足が日本から遠のいている今、レイジこそが私にとって最も重要なバンドだ。最も切実なバンドだ。レイジのライヴでなら、私は何だってできる。赤坂Blitzや東京ベイNKホールではほとんど椅子席に陣取る私なのに、今このときはどんどんモッシュの渦の中に身を突っ込ませている。彼らの姿を、彼らの音を、彼らの一挙手一投足を、彼らの全身全霊を注ぎ込んだライヴを、彼らの存在を、彼らの叫びを、そしてその奥底に宿るひとすじの光を、私は頭ではなく体で感じているのだ。


中盤の『The Ghost Of Tom Joad』に差し掛かったとき、私はステージ前ほぼ真ん中の前列の中にいた。前2人の肩に手をかけ、そして「すいませーん!」とわめき、一気に体を宙に浮かす。そのまま少しずつ前方へ。うつぶせというか、スーパーマンが飛行するような格好で、私は人の頭の上を進んでいる。そして人の頭が尽き、黒人セキュリティが待ち受ける柵の外へ。ここで体が一回転する。疾走するジェットコースターから投げ出されたようになる。体が仰向けになり、私の目は一瞬だが天空をしっかりと捕らえた。



























 星が見えた。





























 夜空に光り輝く無数の星が見えた。





























 まるで夢の中の世界のような、





























 時間とか空間とか、





























 そんなものを大きく飛び越えてしまったような、そんな光景に思えた。

























































そして、私は仰向けのまま重力に従った。そのまま落下した。痛え!と反射的に思ったのだが、実は下にはマットが敷かれていた。その上にどさっと落ち、もそもそと身を起こす。黒人セキュリティにぽんと背中を叩かれ、やっと我に返る。この一瞬、このひととき、私のフジロックの臨界点だった。全身汗だくでびしょぬれになり、体力もかなり消耗しているというのに、私の気持ちは満たされていた。


モッシュの渦の中を、ステージとは逆の方向に進み、PAの右付近まで来てみる。振り返ると、ステージが全て見渡せ、さっきまで自分もその中にいた大モッシュ群をも一望できる。そこでほっと一息入れた瞬間、『People Of The Sun』のイントロが!夜の闇の中、カクテル光線の当たるステージ上だけが明るく輝く。その中を飛び跳ねるザック。gを刻むトム・モレロ。しかし、輝いているのはステージ上だけではない。天まで届かんばかりにモッシュする無数のオーディエンス。この日、今この場に居合わせている人全て、その顔が、その魂が、輝いていたのだ。


曲は『No Shelter』へとつなぎ、まさにクライマックスを迎えている。私はそれを見届けてレジャーシートに戻り、上半身にへばりついているTシャツ(この日買ったレイジのもの)を脱いで新しいものに着替えた。そしてその後、ホワイトステージにつながる林道の方へ歩いていく。しかし・・・





私の当初の思惑は、林道に陣取ってレイジを見届け、レイジ終了と同時にホワイトステージダッシュしてアンダーワールドを楽しむことだった。だけど、レイジ登場の瞬間に頭がショートして前方に突進。更に中央に突っ込み、そしてダイヴ。・・・と、ここでもう燃え尽きてしまっていたのだ。もうホワイトステージまで行く余力は残っていなかった。それと同時に、レイジのこの素晴らしいライヴをいつまでも自分の中に留めておきたいと思った。


ラストの『Killing In The Name』が終了したとき(新曲も2曲ほど演ったようだが、もちろん記憶飛んでいる)、温かさに包まれたような浮遊感を感じた。そして、過去2年のフェスと今年のフェスがあらゆる意味でまるで別格であり、まるで別次元のものとなっていたことに気付かされた。

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終了予定時間の11時を過ぎ、初日グリーンのトリであるトドス・トゥス・ムエルトスが登場する。"アルゼンチンのレイジ"という触れ込みだったが、なるほどレイジがエスニックになったようなサウンドである。ステージ前にはまだ結構な人がいて、再びモッシュの渦ができている。先程のレイジの余韻に浸りつつ、私はホテルに向かって戻り出した。トドスが終わっても、Virgin Tentは朝5時までDJとライヴが続いている。そう、今年のフジロックは眠らない。しかし、私は2日目以降に備えて眠りにつくことにする。



























(99.8.30.)
















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