Fuji Rock Festival'07 Day 3-Vol.3 Battles/Jake Shimabukuro/Heaven's Jam







やたらと前評判が高いのだが、その一端すら把握できないままに私が今回臨んだのがバトルスだ。がしかし、ホワイトステージ近辺は大勢の人でぎっしりと埋め尽くされ、フィールド・オブ・ヘヴン方面に行く人の移動もままならない状態になってしまい、スタッフからは座っている人は立つようにというアナウンスがされた。まさかここまでの状態になるとは予想できなかったし、またダメを押すように、バンドスタッフがステージ上からもっと騒げとオーディエンスを煽った。スタッフがこういうことをするのは珍しいと思うのだが、それだけ腕に自信があるということだろうか。


ライヴは、まずひとりだけが出てきてかがみながら弾き始めた。ベースのように見えたが、その音色は重いビートではなくまるでギターのようなノイズだった。やがて、他の3人もステージに登場。ドラム、ギター、キーボードという配置となり、先ほどの人もギターに持ち替えていた。そしてここから、尋常ならないパフォーマンスが延々と繰り広げられ、オーディエンスは音の洪水に溺れることになる。即興性を追求したスタイルで、曲と曲との間を空けることがなく、常に誰かが演奏を続けているような状態に。場内には、タダならない異様な空気が漂い始める。


いちおう、サウンド的にリードしているのはドラムだ。リズムがシフトチェンジし、次のフレーズに入ったなと思えるのは、ドラマーがそうしているからなのだが、しかしドラマーが明確な指示を出しているようには見えない。最初に出てきたギターの人がリーダーシップを取っているように見えないこともないのだが、この人とて明確に指示を出しているわけでもなく、ほとんど阿吽の呼吸で4人が動いているように見える。シングル『Atlas』ではキーボードの人がヴォーカルを披露し、それが機械処理されて楽器のひとつとして機能。もうひとりいるギタリストは、時にプログラミングもこなし、とにかくなんでもアリのスゴいライヴになった。早くも9月に単独再来日が決定しているのだが、チケットは発売即完売で、入手困難のプレミアになっている。これも、まさにフジ効果だろう。





3日目に関して言うと、個人的にはグリーンやホワイトのトリには失望していて、当初はレッドマーキーでクラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤーを観て帰るという計画にしていた。のだが、ここまでフィールド・オブ・ヘヴンやオレンジコートにはまるで足を踏み入れておらず、こっちで最後を過ごすのもアリかなと思い直すようになった。ので、まずはアヴァロン・フィールドで腹ごしらえをし、ヘヴンを通過してオレンジコートへ足を踏み入れた。巨大なミラーボールがフロア後方に悠々と聳え立っていて、そしてステージではジェイク・シマブクロがライヴ中だった。


すっかり陽が沈んだ夜の山中で、ウクレレの音色に浸るのも悪い経験ではなかった。ステージには機材らしい機材も特になく、ジェイクがひとりでウクレレを弾いていた。ほぼ1曲毎にMCを入れ、次に演奏する曲を紹介。シンディ・ローパーの『Time After Time』やジョージ・ハリスンの『While My Guitar Gently Weeps』、ビートルズの『Something』などを演奏してくれた。途中、実弟のブルース・シマブクロもアコギを抱えて登場し、兄弟セッションを披露。惜しむらくは、昨年大ヒットを飛ばし映画各賞を総ナメにした「フラガール」のテーマ曲が聴けなかったことくらい。





フィールド・オブ・ヘヴンに戻ってきた。ミラーボールといえばむしろヘヴンの方が本家で、アヴァロンからの入場口やPAの頂上に吊るされ、妖しくも美しい光を放っていた。ヘヴンとオレンジコートとの導線のところに張られているタープにもミラーボールが吊るされ、またすぐ近くには無数のキャンドルが立てられていて、写真を撮る人が多かった(私も撮影させてもらった)。さて、ヘヴンのトリにして私のフジロック'07のトリは、その名もヘヴンズ・ジャムという、この日この場限りの特殊ユニットである。私がココで締めくくることに決めたのは、開催一週間前にメンツの豪華さに気付いたからだった。


定刻より少し遅れてライヴが始まったのだが、ステージには総勢なんと12人。その正体だが、フリーライヴバンドのダチャンボ全員、Rovoの勝井祐二と山本精一、シアター・ブルックからは佐藤タイジとエマーソン北村、などである。個人的にはシアターブルックのライヴは何度か観ていて、Rovoも今年5月に日比谷野音で観ているので、これがどれだけ豪華なメンツかというのが痛いほどわかる。なにしろドラマーだけで3人、キーボードも2人、ギターが3人、という凄まじい状況で、なのに各人の音を潰しあうどころか、それぞれが個性を発揮しつつ巨大ユニットとしても見事にまとまっているという、驚異的な状況になっているのだ。


更に付け加えると、ステージ前の両サイドが柵で仕切られていて、その柵の中ではファイヤーダンスのパフォーマンスが繰り広げられていた。3人が交互に火のついた棒を振り回したり、持っている棒の本数をどんどん増やしていったりしていて、それをすぐ間近で観ることができた。小柄な女性もひとりいた。そしてステージだが、Rovoのメンバーをフィーチャーしたセッションを経て、スペシャルゲストとしてエゴ・ラッピンの中納良恵が登場。インストの曲だと思うが、中納は即興で歌詞をつけて歌い上げていた。すると今度はシアターをフィーチャーするようになり、タイジがリードヴォーカルを取って『One Fine Morning』を。タイジもヘヴンに魅せられたひとりであり、それが最終日の夜にこういう形でステージに立てているのだから、この人にとっても幸福な瞬間であるはずだ。


ゲストは更に増え、犬式のヴォーカルとソイル・アンド・ピンプ・セッションズのサックスが加わり、一度はステージから掃けたRovoのメンバーも戻ってきて、ステージ上はもう人と楽器で埋め尽くされていた。壮絶にしてドラマティックなセッションが延々と繰り広げられ、ダメ押しでアンコールもやってくれ、終わってみれば時間は深夜12時になろうかというところまで来た。個人的には、毎年グリーンやホワイト、レッドマーキーといった主要ステージで過ごしがちなのだが、今回ヘヴンで締めたのは絶対に「当たり」だった。































満たされた気持ちになり、出口を目指した。ホワイトステージではまだジュノ・リアクターが頑張っていて、グリーンステージではクロージングのロストプロフェッツが頑張っていた。それらを通過してゲートも出て、パレス・オブ・ワンダーに立ち寄ってみた。鋼鉄の球体の中を3台のバイクでぐるぐる走るという、インターナル・ヴァレーンズ・ゴローブ・オブ・デスによるアトラクションを間近で堪能し、3日間の楽しかったさまざまな光景を今一度頭の中に浮かべながら帰途についた。今年は個人的な都合もあって前夜祭をパスしての3日間参加になったが、天候に恵まれたこともあってか、とても楽しかった。


(2007.8.26.)
















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