Fuji Rock Festival'07 Day 3-Vol.2 Mika/The Shins/Peter Bjorn & John/Happy Mondays







グリーンステージの向かって右前方に陣取り、時間になるのを待った。降っていた小雨は待っている間にあがり、雨具を脱いでも平気な状態になった。3日目の午後のグリーンステージというのは、例年あまり人が集まらない、閑散としているイメージがあったのだが、ここでは違った。既に話題沸騰、新人でありながら今年のフジロックの目玉のひとりと言っていい、ミーカが登場するからだ。


予定時刻より少し遅れて、まずはバンドメンバーが登場。『Relax (Take It Easy)』のイントロをバンドが演奏する中、最後にミーカその人が姿を見せる。細身で長身と聞いてはいたが、想像以上に存在感があった。ジャケットを着てブルーのぴったりパンツをはいており、そしてトレードマークのようなヴォリュームのあるヘアスタイルと、事前に植えつけられていたイメージまんまである。そしてその歌声だが、こちらもCDで聴いていたまんまのハイトーンヴォイスだ。


がしかし、正直なところ中盤までは結構微妙だった。ミーカ自身のパフォーマンスに何が悪いというところはないのだが、グリーンステージ、及びそこに集まったオーディエンスと、つまりはこの舞台及び環境を自分のモノにし切れていないというか、噛み合っていないような状態なのだ。こんなことなら、もうちょっとジ・アンサーを観ていてもよかったのでは・・・?という後悔の念が頭をよぎった。のだが、ユーリズミックス『Sweet Dreams』のカヴァーでシフトチェンジに成功。もともと原曲はヘヴィーで、マリリン・マンソンのカヴァーは更にダークだが、ここでは極上のポップチューンとして機能しており、ここに来てやっと場内がひとつになった感がある。


こうなればもう押せ押せモードで、ドラム缶でパーカッションプレイをしたり、ステージを降りてモッシュピットに突入したりと、何をやってもいい方に転ぶ典型的なステージに。ヒットチューン『Grace Kelly』ではミーカのハイトーンヴォイスが一層輝き、そしてラストの『Lollipop』では、着ぐるみがステージに登場したり、無数の巨大な風船がステージからモッシュピットに送られたりと、フレーミング・リップス状態に。しかし、こうした仕掛けが有効になるのも、肝心のミーカその人の実力が確かだからで、終わってみれば非常に精度の高いライヴに仕上がっていた。2000年代に入り、決定的なバンドというのはわずかに現れてはいるが、決定的なソロ・アーティストとなると、ここまでほとんどいなかったように思う。今後、順調に音楽活動を行うことができれば、プリンスやベックの系譜を継ぐ存在になりうるとさえ思うのだ。





この後ホワイトステージに移動。全米や全英でヒットを飛ばしたアーティストがエントリーされるのも、フジロックのいいところのひとつだ。去年はナールズ・バークレイがそうだったが、今年はアルバムが全米2位を記録したザ・シンズがそれに該当すると思う。バンドは4人組で、ルックスが売りというわけでもなく、そしてやっている音楽も地味渋というか、手堅いというか、一見一聴で強烈なインパクトを与えるタイプではないらしい。個人的には正直あまりピンとは来なかったのだが、奇をてらわないオーソドックスなスタイルの中に、アメリカ人の心を掴むものがあるのかなと思った。





再びレッドマーキーに舞い戻るのだが、ここでまたも雨が降り出し、しかもかなり強い雨足になった。幸いにも10数分程度で済んですぐにあがり、このときが今年のフジロック期間中最も多く雨量を記録した瞬間になったと思う。そしてマーキーでのライヴは、ピーター・ビョーン・アンド・ジョンである。オープニングのSEが『Young Folks』のウクレレ?バージョンで、ここで早くも場内が沸く。バンド名が示す通り、ギター&リードヴォーカルがピーター、ベースがビョーン、ドラムがジョン、と、つまりはスリーピース。演奏はさわやかポップ路線なのかと思いきや、曲によっては意外やハードでエッジの効いたギターロックチューンもあり、バンドの懐の深さを感じさせる。


そしてクライマックスになったのは、もちろん『Young Folks』だ。まずピーターが、ゲストと称してディアフーフのサトミ、クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤーのドラマーであるショーンをパーカッションとして招き入れる。そしてピーターが口笛を吹き出して(SEもかぶせていたように聴こえたけど)、ついにが始まった。まずリズム隊だが、ジョンとショーンのツインでビートを刻み、ビョーンのベースが脇を締める。ヴォーカルはサトミとピーターのツインで、サトミは軽快に上体を揺らしながらささやくように歌い、そしてピーターの歌声がオーディエンスの熱狂を誘っていた。この曲は、一時期FMラジオでヘヴィーローテーションになっていて、私もバンドより先に曲の方を知っていた。それを今回ナマで堪能できてしまったのだから、感激もひとしおである。





昨年は、モグワイとの被りもあってスルーしていたハッピー・マンデーズだが、彼らを観られるチャンスは意外に早くめぐってきた。近く新作もリリースされるとのことで、どうやらバンド活動は一時的なものではなく、継続的に行われるようだ。去年はスペシャル・ゲストとしてグリーンステージに立ったが、今年は夕暮れ前の時間帯の登場である。個人的に、彼らを観るのは99年のホワイトステージ以来になる。


このバンド、そもそもまともにライヴができるのかという不安があるのだが、意外と格好がついていた。バンドは大所帯で、それを率いているのがフロントマンのショーン・ライダー。体型はかなり巨大化しており、ヴォーカルもところどころ途切れていて、黒人女性シンガーのソウルフルでファンキーな声の方が優っている気もするが、ハピマンの曲が備えるダンス~ファンクのテイストは機能している。そしてハピマンといえば、ダンサーのベズというもうひとりのキーマンがいる。ベズの風貌も以前とはかなり変わってしまってはいたが、それでも例によってマラカスを振り、踊りながらステージを右に左にと足を進めていて、オーディエンスを煽るのにひと役買っていた。


(2007.8.26.)
















Back(Day 3-Vol.1) | Next(Day 3-Vol.3)





Copyright©Flowers Of Romance, All Rights Reserved.