Fuji Rock Festival'07 Day 2-Vol.5 Ash/Beastie Boys/Space Cowboy







イギー&ストゥージズの衝撃と感動の余韻に浸りつつ、このままグリーンステージに残って少し休み、トリに備えるという考えも頭をよぎった。がしかし、結局気を引き締めてホワイトステージに向かうことに。今年のラインナップから言って、ホワイトステージが入場規制状態になることは恐らく1度たりともないだろうと思っていた。がしかし、着いてみると敷地内は大勢の人が密集していてカオス状態に。フィールド・オブ・ヘヴン方面から戻ってくる人と、アッシュのライヴを観る人とが交錯していたのだ。とても前の方にまで行くことはできず、仕方なく後方からステージを観ることに。


今年新譜をリリースしたアッシュだが、これまでのアルバムのライナーノーツや雑誌の記事などを読んでみると、どうもバンドに対してあまりいいことが書かれていない。本国でセールス的に惨敗してメンバーがうちひしがれたとか、制作中にメンバー間の仲が険悪になったとか、そんなような論調ばかり。そして極めつけは、紅一点だったギタリストシャーロット・ハザレイの脱退だ。そのシャーロットは6月に来日して気を吐いたばかりだが、ではアッシュの状態はどうなのか、という面持ちで私は臨んだ。個人的には、96年と99年の来日公演は観ているが、以降随分ご無沙汰になっていた。


がしかし、3人に戻ったアッシュのステージは、そうしたゴタゴタを払拭して余りある、会心のパフォーマンスを繰り広げていた。サポートのギタリストを動員してはいたが、その音量と音圧は凄まじいくらいに大きく、何の飾りもないステージにおいて、まさに彼らの生身のプレイこそが主役となり、観る側を圧倒していた。曲も『Goldfinger』や『A Life Less Ordinary』、『Kung-Fu』など、奇しくも私が観ていた時間帯は初期の曲が多く演奏され、ぐっと入り込んでしまった。何もネガティブな要素ばかり挙げなくたって、バンドはちゃんとやってるじゃん、その結果がこの入場規制寸前の状態なんじゃん、と安心したのだった。





そして再びグリーンステージに舞い戻り、この日のトリであるビースティ・ボーイズを。ステージにはバンド用のセットが既に用意されている中、まずはミックス・マスター・マイクによるDJプレイが始まり、少しするとサンダーバードのカウントダウンが始まり、そしてついに3人が登場。3人とも、現在のパブリックイメージでもあるスーツにサングラスといういでたちだ。直前に全編インストの新譜『The Mix Up』をリリースしたばかりで、ライヴがどのようなスタイルになるのかが注目だったが、まずは『Super Disco Breakin'』~『Sure Shot』という、「ノーマルな」スタイルでスタートだ。


そして、10分ほどすると3人はそれぞれ楽器を手にして演奏を始める。アド・ロックがギター、MCAがウッドベース、マイクDがドラムである。ステージにはサポートのドラマーもいてツインドラム状態になり、更にはマニー・マークもキーボードで加わり、フルバンド状態になって演奏が繰り広げられた。マイクDがリードヴォーカルを取る曲やインストの曲などが演奏されると、再びラップスタイルへと戻る。メンバーはいつのまにかサングラスを取って素顔をオープンにし、またスーツの上着も脱いでいた。『Body Movin'』や『Check It Out』では場内はタテノリになったし、またMCの中でランダムに「Fuji Rock!!」と言っていて、そこにもオーディエンスは反応した。


ラップスタイルのときは、曲と曲の間でミックス・マスター・マイクがレコードを替える都合もあり、その間メンバーがMCをしてつないでいるのだが、このときはやはり空気が間延びしてしまった。ラップやヒップホップのライヴでなら日常的な光景だが、ロックフェスティバルでそして日本でとなると、こうなってしまうのは致し方ないところだろうか(個人的にはこの「間」も楽しめたのだけど)。とにかく、ラップスタイルとバンドセットを交互に進める形でライヴとしての構成を成り立たせ、『So What'cha Want』で本編終了した。


しかし、トリの特権でもちろんアンコールとなり、まずはMMMのスクラッチプレイが繰り広げられた後に、『Intergalactic』の電撃のイントロが。もともとポップでわかりやすい曲調であり、PVが新宿で撮影されていることもあって、この曲は日本人にとってスペシャルな曲になっている。そして、オーラスはバンドスタイルでの『Sabotage』。ツインドラムのビートがパワフルに響き、マニー・マークが大きくのけぞりながらキーボードを弾き、3人のヴォーカルが最後には絶叫へと転化され、2日目のグリーンステージも初日に劣らない熱狂ぶりを見せて締めくくられた。





深夜のレッドマーキーに参加するかしないかは、毎年悩ましいところである。朝から活動していると、とてもじゃないが深夜までは体力が持たないのが本音だ。しかし今年は、2日目の夜だけは少しだけトライしてみようと思い、スペース・カウボーイのプレイを楽しんだ。今はいったい何時なんだというくらいにマーキー内はびっちりと人が集まっていて、最後方から入場した私は、少しずつ前進して最終的には前方左のポジションに陣取ることができた。


ステージのバックドロップにはスクリーンがあり、曲にシンクロして映像が流されていた。中にはスペース・カウボーイ本人がギターを弾いたり女性ダンサーと戯れたりする映像も流れていて、それがオーディエンスの興奮の度合いを一層高めていた。演奏と言っても、ほとんどiBookと隣接している機材の操作のように見え、もちろん生楽器を弾くことはない。そしてデジタル機器のチューニングが今ひとつだったのか、ところどころで音が飛んだりズレたりするという、あいたたた~という状態になったこともしばしば。しかしそれでも、ラストはプリンス『I Would Die 4 U』のデジタルカヴァーできっちりと締めくくってくれた。この後のアクトも気にはなっていたのだが、翌日のことも考慮し、2日目はここで引き上げることにした。


(2007.8.20.)
















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