Fuji Rock Festival'07 Day 2-Vol.2 !!!/Kula Shaker







グリーンステージに舞い戻ったが、なんともスゴいことになっていた。いくら3日間の中で最も人が多くなる土曜日とはいえ、まだ日中の時間帯であるにもかかわらず、ヘッドライナーかと思えるくらいに人が集まっていたのだ。私の体験及び記憶では、この時間帯でのこれだけの密集状態になっているのは、2004年のフランツフェルデイナンド以来である。そしてその状態を真っ向から受けて立っているのが、カナダの変態バンド!!!(チック・チック・チック)だ。


私は2004年フジの深夜のレッドマーキーで既に体験済みだが、とにかくこのバンドはライヴに尽きる。ベースは生楽器による演奏なのだが、電子音を駆使したダンスビートも相俟っていて、観ていて自然に体が動いてしまう。ヴォーカリストは2人いて、曲により入れ替わる。いや、ヴォーカルだけでなく、曲により担当の楽器も目まぐるしく変わるという自在ぶりを発揮し、バンドやライヴパフォーマンスのあり方そのものを次から次へとブチ壊していっているようにも見える。


どこかでやるだろうと思っていたが、ライヴが終盤になったときに、メインのヴォーカリストがステージを降りた。彼はフロア最前に詰めているオーディエンスの元に歩み寄り、予定通りもみくちゃにされていた。肉体性に溢れ、なんでもアリのパフォーマンス。そして音はビートが効いてしかも踊れるグルーヴを備えているとなれば、いいライヴにならないはずがない。この日初めて!!!のライヴを観た人は度肝を抜かれたはずだし、何度か観ている人であっても、改めてこのバンドのよさを認識したことと思う。グリーンステージ進出は当然だと思ったし、彼らは充分すぎるほどにその役割を果たし切った。





昨年はミニアルバムをリリースした状態での参戦だったが、今年は晴れて再結成後初となるアルバムを引っ提げての参戦となる、クーラ・シェイカー。よくよく考えてみれば、フロントマンのクリスピアン・ミルズはジーヴァズとしても2度出演していて、半ばフジ常連になりつつある。それまではバンドの状態もあってか、どこかプレッシャーにさらされるのをかわそうかわそうというところがあった。しかし今回は、オーディエンスとの勝負を真っ向から受けて立つ状態にある。


グリーンステージにインド風のSEが鳴り響き、少ししてバンドがステージに登場。そしてオープニングにまずびっくり。聴き覚えのあるイントロだと思ったら、なんと『Hey Dude』ときた。徐々にせり上がって来るリズムに場内も沸き立ち、そしてギターをかき鳴らし歌い上げるクリスピアンの姿に、これは「行ける」んじゃないかなという感触を得ることができた。バンドは昨年と同様、キーボード以外はオリジナルメンバー。ジェイ・ダーリントンは現在オアシスのツアーメンバーで、「現在の境遇に満足している」とのこと。しかし、この場にいるキーボード奏者は、白装束をまといヒゲをたくわえ、かなり目立っている。


さて選曲だが、序盤はリリースされたばかりの新譜『Strangefolk』からの曲が中心になった。もちろんフジ参加に先駆けて入手し聴いてみたのだが、群を抜いてとまではいかないものの、それなりにまとまった作品に出来上がっていると思った。『Great Dictator(Of The Free World)』はかつてのクーラの曲と比べても見劣りしないし、アルバムのタイトル曲である『Strangefolk』を経ての『Song Of Love/Narayana』は、かつてのインド趣味が少し垣間見れ、それをいい形で仕上げることに成功している。この3曲はアルバムの中盤を飾り、この場でもまんまの曲順で演奏されていて、今後しばらくはクーラのライヴのポイントになってくるのではと思う。





そして終盤は、予想通りかつてのクーラの曲の目白押しとなる。『Shower Your Love』や『Tattva』を経て放たれた『Hush』は、このライヴでのクライマックスになった。ラストはもちろん『Govinda』で締め、約1時間のステージを彼らは立派にやり切った。正直に言えば、あの曲もこの曲もと、聴きたかった曲はほかにもまだまだあった。またクリスピアンはカヴァー能力にも長けた人で、ボブ・ディランの『Ballad Of A Thin Man』なんかも披露してくれてもよかったと思う。


ではあるが、復活クーラがようやく軌道に乗ったかなという感触を掴むことができたのが、何より嬉しかった。少なくとも、昨年リリースされたミニアルバム『Revenge Of The King』、及び今年限定リリースされたミニアルバム『Freedom Lovin' People』は、クーラのようなジーヴァズのようなどっちつかずの音で、クーラが復活したんだという感触を得ることができなかったからだ。しかし『Strangefolk』はそうしたもやもやを払拭したし、その前向きなエネルギーがそのままこの日のライヴにも反映されていたように思う。ここのところ来日はフェスばかりだが、そろそろ単独での来日もありそうな気もしてきた。

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(2007.8.20.)
















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