Fuji Rock Festival'07 Day 1-Vol.3 Fountains Of Wayne/The Cure







初日レッドマーキーのトリは、ファウンテンズ・オブ・ウェインである。フジロック出演は99年のホワイトステージ以来で、個人的に観るのは2003年の単独公演以来になる。コンスタントに活動を続けているバンドで、今回は新譜『Traffic And Weather』をひっさげての参戦だ。さすがにトリということもあり、先ほどのOCSに劣らない上々の客入りである。


メンバーは不動の4人。フロントにギター&ヴォーカルのクリス、その向かって右にはベーシストで参謀格のアダム。クリスの向かって左にはギター、後方にドラマーという配置である。オープニングの曲(曲名失念)では、なぜか間奏にデレク&ドミノス『Layla』のリフをチラリと披露。どうやらアドリブのようだ。曲は、序盤で早くも『Denis』を演ってしまったのには驚いたが、以降は新譜からと往年の曲を交えたカ形で演奏を続けていた。代表的な曲はだいたい漏れることなく披露され、そして、ハイライトになったのは『Stacy's Mom』。サビに差し掛かると、場内も待ってましたとばかりに熱狂が爆発した。


このバンドはクリスが軸になっていて、それをアダムが支えるという図式で成り立っていると私は思っている。2003年に観たときはクリスの状態が少し危なっかしい気がしたのだが、現在のこの人は安定しているように見えた。そこで、私は今回ギタリストのジョディに注目。そもそもこのバンドの曲には印象的なリフが多く、そしてそれらのほとんどはこの人の指から発せられている。にもかかわらず、この人は自分から前へ前へと出てくることはなく、淡々と弾いているだけである。ギターヒーローを生まず、バンドとしてのコンビネーションの中でメロディを重視させていくという方法論は、あまた溢れ返るギターバンドとは大きく異なっており、そしてそれは彼らが生き永らえているポイントのひとつでもあるのかなと思った。





前夜祭はレッドマーキー内で開催されており、グリーンステージ方面には一般客は入ることができない。なのだが、なんでもその最中にザ・キュアーがリハーサルを行っていたとのこと。入場口前の柵ギリギリのところにまで人が押し寄せ、漏れてくる音に耳を傾け、豆粒ほどのメンバーに見入っていたそうだ。そもそもフェスというのは一発勝負なのだが、状況が許す範囲でリハをするところに、キュアーいやロバート・スミスという人のこだわりが垣間見える。そして、84年に一度来日しただけのキュアーが、23年の時を経てほんとうに日本に来てくれたのだと思うと、喜びがこみ上げてくる。


そして時間となり、いよいよバンドが登場。ロバート・スミスは、思った以上に巨漢で横幅が広い(笑)。トレードマークのぼさぼさヘアはまんまで、顔面に施したメイクもかなり分厚い。一瞬、渡辺えり子が鈴木その子のメイクをして出てきたのかと思った(笑)。そして例の甲高い声が響き始めると、おおーーっというどよめいきが場内から沸き起こった。


23年のブランクがあり、今回キュアーを初めて観るという人が大半の中(私も今回が初キュアーだ)、ロバート・スミスは恐らく欧米でいつもそうしているような選曲でライヴを始めてきた。代表的な曲しか知らない私にとっては、正直キツい展開になった。そして、場内全体が一体化して熱狂するというようにはならず、ステージに食い入って見つめるという状態にシフト。正直に言って、ここで不安を覚えた。場内は先ほどのミューズのときより明らかに人が減っていて、キュアー来日を待ち望んでいた人が、ほんとうはそんなにはいなかったのではないだろうか。バンドとオーディエンスと舞台と出演順が噛み合わない、ミスブッキングになってしまったのではないだろうか、と。





しかし、ロバート・スミスもそういう空気を察知したのか(あるいは最初からの計画通りだったのか)、中盤からアプローチを変えてきた。個人的にまずぐっと引き込まれたのが『Pictures Of You』で、更に2曲ほど経た後に『Friday I'm In Love』と来て、ここで場内の空気が明らかに一変した。この曲はキュアーのフジエントリーが決まったときからラジオで繰り返しプレイされてきた曲だ。そしてその理由のひとつは、この日が金曜日だからである。ロバートはそのことを知ってか知らずか、とにかく嬉々としてギターを弾きながら歌い上げる。ここに来て初めて、キュアーが観られてよかったと実感した。


更に追い討ちをかけるように、続けて今度は『Just Like Heaven』だ。個人的にはダイナソーJr.のカヴァーの方を先に聴いていたのだが、もちろん本家本元はコチラである。確かにJマスキスのカヴァー能力も優れてはいるが、それも原曲が備えるポップさがあればこそ映えてくるというもの。それを懐メロとしてでなく、今の時代にも通用する曲に仕立てているのは、ロバート・スミスの手腕に他ならない。更には『The Kiss』『One Hundred Years』なども披露され、後半は奇跡の瞬間の連続のようになって、幕を閉じた。





フェスではヘッドライナーがアンコールをするのは半ば通例のようになってはいるが、キュアーがそれをするかどうかは正直微妙だと思っていた。しかしロバート・スミスはじめバンドは再登場してくれ、ここでも3曲を披露してくれた。ロバートは「アリガトー」という日本語のMCを繰り返していて、この人にとっても23年ぶりに日本の地を踏めたことが意義深いことになっているのではと思われた。


そして、これだけでは終わらなかった。まさかまさかのセカンドアンコール!まず演奏されたのは、『A Forest』という曲。個人的には、これでこの後に『Boys Don't Cry』が来たらもう言うことないな、でも初期も初期のシングルだし、今の彼らがこの曲を演奏することなんてないかなあ、とか、ごちゃごちゃと考えていた。するとなんと、曲間を切らさずメドレー状態のままで来てしまったのだ!『Boys Don't Cry』が!これってでき過ぎだろ(笑)!





ロバート・スミスという人はとても神経質で気難しそうな人という気がしていたのだが、いったんその気になってしまえば、ファンを満足させるためのことはなんでもする人ではないだろうか。2度目のアンコールが終わったとき、時刻は12時を回っていた。ミューズのときから時間がズレていたとはいえ、キュアーが演奏した時間は計2時間15分にも渡っていた。これは、グリーンステージにおいては2001年にニール・ヤングが2時間半演奏したのに次ぐ時間数だ。前半こそ微妙な空気が流れてはいたものの、中盤以降はバンドと場内とがシンクロした素晴らしい空間が出来上がり、最終的には非常にいいライヴになった。そして、ロバート・スミスは最後にこう言った。「See you 23years later...」と。23年後に会おうって、あーた(笑)。


(2007.8.5.)
















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