Fuji Rock Festival'06 Day 3-Vol.3 Killing Joke/Super Furry Animals







レッドマーキーに行き、キリング・ジョークを観た。正直言ってあまり期待もしていなかったし、一時は観なくてもいいかなとさえ考えていた。インダストリアル・ロックの元祖だとか、ナイン・インチ・ネイルズに多大な影響を与えているとか、そうした枕詞が飛び交ってはいた。だけど、調べてもはっきりした情報を入手することができず、どういう作品を発表してきたのか、どんな音楽なのかというのが、事前には把握できなかった。もしかしたら、肩書きだけが先行しているとんだ食わせ物では、という疑念を抱いていたのだ。


しかし彼らのパフォーマンスに触れたその瞬間、度肝を抜かれてしまった。フロントマンのジャズ・コールマンは顔面に白塗りのペイントを施し、黒系のツナギ服を着ていて、その鬼気迫る風貌だけで異様な存在感があった。バンドは4~5人くらいで、生楽器プラスキーボードという編成だったが、その音圧は凄まじくそして重厚で、それにも圧倒されてしまった。いつの頃の曲を演ったのかは全くわからなかったが、それらが全く古びておらず、聴いて素直にカッコいいと感じてしまった。インダストリアルの元祖という肩書きは、伊達ではなかったのだ。


そして、更なるサプライズがあった。男女2人の白塗りで半裸状態のダンサーが登場し、狭いステージ上のわずかなスペースを使って、口から火を噴くわ、火のついた棒を振り回すわ、その棒の火を次々に飲み込むわと、やりたい放題。男性ダンサーがやや萎縮気味であるのに比べ、女性ダンサーの方がやたらと積極的で、次から次へといろんなことをやり出す始末。彼らは、実は深夜のパレス・オブ・ワンダーでアトラクションをしている人たちだそうで、それにしても凄かった。そして彼らのパフォーマンスがキリング・ジョークの音楽にマッチしていたというのが、一番のツボだった。個人的には、2000年のラムシュタインのパフォーマンスを思い出していた。





この後は、最後の夜に備えるべくオアシスで腹ごしらえをして、そしてホワイトステージへと向かった。個人的には2000年のレッドマーキー以来となる、スーパー・ファリー・アニマルズを観るためだ。時間的にはグリーンステージのストロークスとまるかぶりだったが、それでも結構な人が敷地内に詰めていた。


開演時間になり、メンバーが登場してライヴが始まった。フロントマンのグリフ・リース・ジョーンズは、ステージ向かって左に立っていた。なぜか戦隊もののような赤いヘルメットをかぶっていて(しかもサイズがかなり大きめ)、そのヘルメットにマイクを当てて歌っていた。ヴォーカルにはエコーがかかりつつも少しこもっていて、それがまた新鮮だった。のっけから、楽しませてくれる人だ。


やがてヘルメットを脱ぎ、素顔を見せてギターを弾きながら歌うという、通常モードになった。バンドは淡々とではあるが気持ちよさそうに演奏していて、その気持ちよさが観ている方にまで伝わってきた。もちろんラウドでもヘヴィーでもノイジーでもないが、自分たちの「間合い」でしっかりとパフォーマンスができていて、そこにかなりのインパクトがあった。日中に観たスノウ・パトロールも、この人たちのように自分のペースで演れていたら、もっといいライヴになっていたのになあと思った。





スーファリは、単に心地いい曲を届けてくれただけではなかった。なぜかポテトチップスをモッシュピットにバラ巻いたり(うまくいかなかったけど)、ギターとベース計3本をクロスさせてエンブレムを形作って見せたりと、いろいろやってきた。更にはブッシュ大統領やブレア首相を指し、「全ての政府は嘘つきだ」というメッセージを、英語と日本語を使ってスクリーンに表示させもした。そしてラストとなり、今度は「次はモグワイ」というメッセージが出た。グリフは再び戦隊ヘルメットをかぶって、ステージを後にした。


メンバーが去り、ステージは無人になった。しかしスクリーンからは映像が流れ、オーディエンスの注目はそちらに移った。映像は、まずスーファリのメンバー5人及び裏方として働くスタッフを、ドラマのエンディング風に紹介した。そしてアングルが変わり、苗場スキー場の入場ゲートから入り、オアシス、林道、アヴァロンフィールド、各ステージなどをランダムに捉え、それぞれの場所で過ごす参加者や、出店の前に立つ売り子の表情などを早回しで映し出した。この日のこのステージのためだけにこうした映像を作ってくれたのが、たまらなく嬉しかった。





今年のホワイトステージには、向かって左側にスクリーンが設置された。ここに映し出す映像も一般募集され、セットチェンジの合間には3~4人のクリエイターによる映像がランダムに流れていた。そしてライヴが始まると、カメラが捉えるステージやオーディエンスの様子を、グリーンステージと同様にスクリーンに映し出していた。これはとてもありがたかった。ではあるが、このスクリーンは、実はこの日のこのときこの瞬間のためにあったと言っても、過言ではなかったと思う。それほど、スーファリのラストの映像は見事だった。決定的だった。そして思った。今年のフジのベストアクトは、間違いなくスーパー・ファリー・アニマルズだと。




(2006.8.27.)
















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