Fuji Rock Festival'05 Day 3-Vol.5 Sigur Ros/Primal Scream







ニュー・オーダーのライヴの余韻に浸る間もなく、ホワイトステージに移動。こちらでは、既にシガー・ロスがライヴ中だった。たくさんの人が詰め掛けているにもかかわらず、みな静かで、食い入るようにステージを見つめていた。そのステージは幻想的で、後方のスクリーンに赤ちゃんや影絵のような映像が映し出されたりしていた。


彼らの演奏は、緻密にして的確だった。シガー・ロスのメンバーは4人のはずなのだが、加えてバイオリン奏者が4人いたりして、大所帯になっていた。ギターの人は弓を使って弾いていて、こりゃジミー・ペイジばりだなと舌を巻いた。響き渡る音は、異様なまでにクリアだ。


やがてステージの前の方にもスクリーンが現れ、演奏しているメンバーを覆い隠す格好になった。演奏は聴こえるがメンバーの姿が見えなくなる具合になり、ただその中で時にはギタリスト、時にはドラマーのシルエットがスクリーンに映し出されるようになり、それがまたステージを幻想的なものにした。そのスクリーンにも、映像が映し出された。


ラストになって前方のスクリーンが上がり、演奏のヴォルテージも上がってきて、最後の輝きを発した。演奏を終えるとメンバーは横一列になって挨拶をし、袖の方に下がっていった。SEと映像だけは延々と続いていて、アンコールを求める拍手が止まない。そんな中で、メンバーは再び登場して礼をしてくれた。礼だけということは、きっともう時間がないのだろう。やがてブライアン・バートン・ルイスが出てきて、ホワイトステージの終了を告げた。





例えとして適切かどうかわからないが、シガー・ロスの音楽は死ぬ間際に聞こえてくる音楽ではないかという気がする。もしもこの先幸福な人生を送ることができて、安らかに死を迎えることができたならば、こんな音楽が流れてくるのではないだろうか。シガー・ロスは9月に新譜をリリースする予定なので、単独の再来日公演があることを期待する。


グリーンステージに戻るべく移動を開始したのだが、ところ天国前で足が止まった。去年と同様、「雪」が降っていたのだ。これは周囲の木々に無数の光を当てているものなのだが、雪が降るときの独特の音、しないはずなのに「しんしんと降る」と表現される音が、ここでも表現されていたのだ。2年続けてコレを見れて、なんだか得した気分だ。








再びの、そして最後となるグリーンステージに舞い戻ると、「ベリー・スペシャル・ゲスト」であるプライマル・スクリームのライヴの最中だった。ほとんど毎年のように来日しているプライマルで、個人的にもそのライヴをほぼ見続けてきているだけに、新鮮味がない反面安心感がある。『Jailbird』『Rocks』『Swastika Eyes』といったお馴染みの曲を連射し、本編を『Movin' On Up』で締めた。序盤の方では、新曲を演ったりしたのかな。


さてアンコールだが、嬉しいハプニングが起こった。ボビー・ギレスビーがゲストを紹介したのだが、その人とはなんとJマスキスだったのだ!プライマルとJというと、一見まるで接点がなさそうな気がするが、実はケヴィン・シールズがJのソロアルバムをプロデュースしているので、恐らくはケヴィンを経由してのつながりではないだろうか。まずは『Skull X』で、その後は誰かのカヴァーと思しき曲。ステージ上にはギタリストが4人もいる格好になっているが、その中でもJの泣きのギターははっきりと聴き取ることができる。


そしてボビーは、「No Fun? No Fun? No Fun? No Fun? No Fun? No Fun?」と、各メンバーに訊きまくっている。セックス・ピストルズいやさストゥージズの『No Fun』を演るのだろう。どうやら今まで1度も演ったことがないと見え、この場でいきなりボビーが思いついて、それでメンバーに『No Fun』ができるかと確認しているのだと思う。そしていよいよ、『No Fun』が始まった。原曲よりも重厚で、音圧が凄まじい。ボビーの気合いの入りようも、尋常ではない。そして演奏が終了し、プライマル・スクリームの「ベリー・スペシャル・ゲスト」としての任も終わりとなった。

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時刻は既に午前1時を回っていて、宿に戻るべく動き始めた。途中ルーキー・アー・ゴー・ゴーのステージに立ち寄り、クアトロというバンドのライヴを1曲だけ観た。グラストンベリーフェスティバルにもこうしたニューカマー用のステージがあるようで、あのオアシスも客がほとんどいないところで歌うところからスタートし、やがてヘッドライナーにまで上り詰めたのだそうだ。若きバンドの弾けるパフォーマンスを観ながら、今年のフジロックも雨に降られて大変だったけど、でもやっぱり楽しかったなあという感慨に浸った。


(2005.8.19.)
















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