Fuji Rock Festival'03 Day 3-Vol.2 The Thrills/Steve Winwood/Ego-Wrappin'







サマーソニックにはキルズというユニットが出演するのだが、フジロックにはレッドマーキーにスリルズというバンドが出演する。共にニューカマーであり、そして名前こそ似たり寄ったりだが、キルズは男女2人の変則スタイルであるのに対し、スリルズは男5人の正統派?ロックバンドだ。


5月に既に来日を果たしており、デビューアルバムはUKチャートで好調だそう。彼らはアイルランド出身なのだが、いい意味でも悪い意味でもアイルランド臭さがない。U2然り、コアーズ然り、クランベリーズ然り、アイルランド出身のバンドというのは、民族色が垣間見られていて、ギターサウンドもどことなく神秘性を感じさせると私は感じているのだが、このスリルズにはそれがない。だからこそ耳当たりがよくまた売れているのかもしれないが、個人的には??だった。


キツい言い方をすると、名前負けしてるんじゃない?スリルズっていう割には、音にしてもバンドのたたずまいにしても、とてもスリリングには思えなかった。名前が似ているバンドといえば、10年前はレディオヘッドはメジャーデビューした年で、またレモンヘッズというバンドもいた。では10年後のこんにちはどうなったかというと、レディオヘッドは押しも押されぬ最重要バンドのひとつとなり、片やレモンヘッズは・・・。このスリルズ、20年後にもいいバンドとして記憶されていたいなんてことを言っているけど、果たしてどうなるかな?





さてグリーンに戻り、オールドファンにはたまらないスティーヴ・ウィンウッド登場。スペンサー・デイヴィス・グループ~トラフィック~ブラインド・フェイス~ソロ、と、いずれも輝かしいキャリアばかり。天才少年はそのまま才人になり、あまりにも器用すぎてケチのひとつでもつけたくなるくらいだが(苦笑)、とにかくすごい人なのだ。


しかしなあ。序盤は地味にハモンドオルガンを弾きながら歌っていて、せっかくのグリーンステージなのに、場内はしぃんと静まり返ってしまっている。新作をリリースしたばかりということもあって、そこからの曲が多いのは自然な流れかもしれなく、また中盤には『Back In The High Life』の変則アレンジの演奏もあった。が、これらはいずれも、スティーヴ・ウィンウッドが好きで好きで仕方がない人向けの内容だと思っていて、フェスでこれはないだろうと思うのだよ。


ジョン・スクワイアのところでも書いたけど、フェスティバルは必ずしも自分目当てのファンばかりが集まるわけではない。そうしたファンに対してどう訴えていくのかも、アーティストの腕の見せ所だと思っている。私はシビレを切らして最後まで観ずにグリーンを後にしたが、ラストの曲は『Gimme Some Lovin'』だったとのこと。こうしたヒット曲こそ出だしにかますべきだった。他にも『Higher Love』や『Roll With It』といった大ヒット曲を持っているのだし、耳慣れた曲をもっと有効に放つべきだった。そうすりゃ、昨年の井上陽水のように、フジロック史上に残るライヴにもなったかもしれないし、またそれができるだけの力量を持っている人のはずなのに。





というわけで、またまたマーキーへ。バンド自体のフジロック参加は3年連続だが、個人的には今回が初となる、エゴ・ラッピンだ。少し早めに入ったこともあって、入場規制には引っ掛からずに済んだ。ほっ。現在人気実力共に充実したバンドということもあり、場内は始まる前から人がみっちりだ。


ライヴは管楽器の音色が耳に焼きつき、ジャジーでムードたっぷりの雰囲気が漂う。決して真新しくはないのだが、といって古臭さも感じさせない不思議な音。そして、上手いなあということばを何度もつぶやいてしまう。それは演奏そのものであり、またオーディエンスのノセ方もだ。ヴォーカルの中納良恵は、細身で小柄。髪は真っ黒のおかっぱで、一見するととても地味。なのに、あんな華奢な体のどこにと思えるくらいエネルギッシュなアクションをし、その声量もすごい。


クライマックスは、もちろん『くちばしにチェリー』。スパイ大作戦のような?イントロに一瞬はっとさせられるが、次の瞬間から大騒ぎになる。ザ・ミュージックの『The People』にも匹敵するくらい、場内に一体感が走り、この場にいられることの幸福感を噛み締める。なんでも、メンバーのひとりが体調を崩して秋のツアーの一部をキャンセルするハメになったらしいが、日々こんな激しいライヴを演っているのでは、それも致し方ないだろう。


(2003.9.22.)
















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