Fuji Rock Festival '02 Summary フジロックフェスティバル'02を総括する







一時は会場の移転も噂になったが、結局今年も苗場で開催。常連者には勝って知ったる敷地になりつつある一方、今年初めて参加した方もおられたはずで、その結果は3日間で延べ9万人という、過去最高の動員を記録。しかし特に3日目(4万人動員)は多すぎる人で場内は飽和状態に達し、'98の2日目以来となる水不足も発生した。


たくさんの人が集まってフェスを楽しんだのは、もちろん喜ぶべきことのはずだ。だけど来年以降のために、よりたくさんの人を受け入れ、そしてフェスを楽しむための器と体勢について、考えなければならない。ここでは今年のフジロックの良かった点、改善すべき点について検証する。もちろん、私の独断と偏見によるものです。

1. 会場(1) 苗場スキー場は快適だったのか
2. 会場(2) アトラクションについて
3. 仕切り 主催者の手際はよかったのか
4. ショップエリア 食事やグッズ売り場はどうだったのか
5. コスト チケット代や交通費について
6. マナー 参加する側の意識について
7. ラインナップ(1) 相も変わらず入場規制
8. ラインナップ(2) 個人的に感じたいくつかの傾向、そして感想
9. トータル そして、来年に向けて












1. 会場(1) 苗場スキー場は快適だったのか

4つの各ステージの作りや向きは、昨年と同じだった。入場ゲートをくぐってすぐのところにあるトイレは、配置が少し変更されていた。昨年までは1列辺りの数が多かったのだが、今年はその数を減らし、その代わりに列の方を増やしていた。これが功を奏したのかはわからないが、混雑の度合いが少しは和らいだ様子だった。例年だと、2日目以降は手を洗うための水が出なくなっていたが、今年はそれがなくてよかったと思う。


前夜祭を含めて4日間、連日すごい人の多さだった。その混雑ぶりが表面化したのが、3日目の午後。フィールド・オブ・ヘヴン~ホワイトステージでは、飲み物が売り切れ状態に。その間のアヴァロンフィールドは、どこも長蛇の列。しかしこの時間帯、実はグリーンでもビール以外は売り切れで、結局オアシス~レッドマーキーにまで行かなければ、水分は確保できなかった。身の危険を、真剣に感じたときだった。


フィールド・オブ・ヘヴンは元ちとせで入場規制寸前となり、その後のホワイトでのスーパーカーで、更に混雑の度合いが増した。多くの人が渡るには、あまりにも細すぎる橋が混雑の原因。スーパーカー終了後、橋を渡るまでに20分から30分は要したと思う。








2. 会場(2) アトラクションについて

グリーンとホワイトの間の敷地には、子供が遊べるエリア"Kids Field"や富士岩石祭博物館などがあった。深夜24時からスタートするライヴスペース"Rookie A Go Go"は、今年は入場ゲート手前に設置。怪奇オブジェがあり、バイクアトラクションなどが行われた"The Palace Of Wonder"と、隣接する格好になった。


昨年冬に苗場スキー場の新たなアトラクションとして作られたドラゴンドラは、会場を一望できるどころか、そのはるか向こうにまで渡っているゴンドラ。到着地はかなり標高の高い地点と思われ、日中でも空気がひんやりしていて涼しかった。ブランコやハンモックなどもあって、フィールド・オブ・ヘヴンさながらに"時間が止まった空間"だった。


ただこのドラゴンドラ、自分で実際に利用してみないと、何がどうなっているのか様子がまるでわからない。つまり情報が少なすぎなのだ。チケット売り場から乗り場までは、キャンプサイトの中を抜けて徒歩約15分。暑い中、これだけで体力的にはかなりキツかった。チケットはキャンプサイト入り口脇で売られていたが、会場内のグッズ売り場やオアシスのInformationブースでも売ればよかったと思う。








3. 仕切り 主催者の手際はよかったのか

昨年から、前夜祭のときにチケットとリストバンドの交換を受け付けていた。そして入場時は、スタッフがリストバンドに交換済みの人は列に並ばなくてもOKという呼びかけをし、無駄な列ができることはなかった。ただ、2日目に限って言えばこの呼びかけがなく、おととしまでと同じ状態に戻ってしまっていた。つまらない凡ミスだ。


昨年からオアシス入り口に設置されるようになった、総合案内のブース。出演者のキャンセルや入れ替え、時間の変更などが逐一掲示板に貼り出された。今年は出演アーティストの時間変更やキャンセルなどがパンフレットや首提げタイムテーブルには反映されず、このブースの掲示をよく注意して見る必要があった。








4. ショップエリア 食事やグッズ売り場はどうだったのか

今年も充実ぶりを持続しているショップエリア。ただ朝9時台に行くと、「まだやってません」と言われるところが多く、ちょっと残念。MTV JapanやスペースシャワーTVといったスポンサーのブースでは、アーティストのインタビューなどでにぎわっていたようだ。


グッズ売り場は、今年格段の向上が見られた。入場ゲート手前にフジロックオフィシャルものの売り場が一箇所。そして場内、グリーンとホワイトの間にアーティストものの売り場が一箇所で(場所が若干変更になった)、これは例年通り。そして更に、フィールド・オブ・ヘヴンにも売り場が作られ、ヘヴン出演アーティスト限定のグッズとパンフレットを販売。パンフレットは、オアシスのInformationブースでも売られていて、いわゆる分散が図られていた。


主催者や関係者が私が作っているこのページを見ているとは思わないが、昨年の総括ページで私が書いた案のいくつかが、今年は実践されていた。オフィシャルグッズの一部については、開催前にオフィシャルサイトで掲載。また、テント前にはTシャツの主なものを掲げておき、列に並んで待っている人でも、どのTシャツを買うかを考えることができた。一部の会社のみではあったが、クレジットカードでの決済も受け付けていた。


その結果どうなったかというと、例年長い列が連なっていたグッズ売り場が、今年はまるで嘘のように(笑)混雑が解消されていた。私個人としては、暑い中を並び続けるのは昨年で懲りたので、すいているところを見計らって覗くことにしていたのだが、それが初日の夕方にできるとは思わなかった。如何に今までの売り方が下手だったか、ということだと思う。やればできるじゃん。








5. コスト チケット代や交通費について

1日券で14,500円。3日通しで38,000円。これは昨年と変わらない。ただ今年は、出演アーティスト未発表の状態で、3月に早割りチケットの受付を実施。対象は3日通し券のみで、値段は30,000円。1万枚限定というものだった。応募が1万を越えた場合は抽選ということだったが、結果的には抽選が行われたようだ。そして、オフィシャルのツアーセンター受付による宿泊施設や交通機関の利用についても、幾分コストダウンが試みられたようだ。サイトもできたし。関西からは、特別列車も出たようだ。


コストダウンをしようとしている姿勢は、認めてもいいかなと思う。そして今年9万人を動員できたとなれば、来年はもっと・・・、と期待していいのかな。








6. マナー 参加する側の意識について

参加者が増えたことの功罪なのか、マナーのレベルは年々低下していっている気がしてならない。


グリーンとレッドマーキーの間の橋は2つあり、それぞれ一方通行のはずなのだが、平気で逆行している人が少なくなかった。ボランティア団体の参加もあって、ゴミを分別して捨てることにもあ定評があったはずのフジロックだが、ゴミ捨て場ではないところにゴミが散乱している光景も、珍しくはなかった。








7. ラインナップ(1) 相も変わらず入場規制

個人的には今年も満足の行くラインナップとなり、行くのがとても楽しみだったが、昨年より豪華さが薄れたのは事実だし(昨年はグラストンベリー中止という追い風もあって、とても贅沢なラインナップだった。あれを毎年持続するのはさすがに厳しいと思う)、果たして他の人たちはどう思っているのかなと、気になっていた。それが結局延べ9万人なのだから、ラインナップとしても上々だったのだろう。


ただ、今年も各ステージで入場規制が発生。こればっかりは、'99で苗場に移ったときからちっとも進歩がない。当人たちがこのステージでと強く希望したのならまだしも、それ以外なら、アーティストの集客能力に見合ったステージを用意すべきだと思う。2日目のエゴ・ラッピンも、3日目午後のスーパーカーや元ちとせも、グリーンでやれば入場規制状態にはならなかったはずだ。コーネリアスとスピリチュアライズドは、出演順を逆にすれば入場規制にはならなかったと思う。








8. ラインナップ(2) 個人的に感じたいくつかの傾向、そして感想

【洋楽と邦楽との境目】
以前から、洋楽も日本のロックも気にせず聴いている人もいるだろうが、今年のフジロックは、いよいよその境目がわからなくなっていることを痛感させた。私自身、観たアーティストの比率は洋邦半々だったし。音楽のジャンルやアーティストの出身国を限定することなくピックアップしてきたフジロックだが、今年はそれが結実し、成果を挙げた年になったと思う。


【同一アーティストの複数回出演】
忌野清志郎は、スパイスマーケット~with 矢野顕子~Love Jetsという、いずれも異なるユニットでしかも別のステージに出演。これだけでなく、前夜祭や2日目の深夜にも飛び入りしたそうだ。テーマ曲『田舎へ行こう』を作り、毎年フジロックに出続けていることで貢献度抜群の清志郎だが、今年は更にその上を行った。50を越えてこのバイタリティーはすごい。

他にもパティ・スミスが初日フィールド・オブ・ヘヴン、2日目レッド・マーキーのトリを務め、感動のライヴを行った。初日はアヴァロンフィールドで、ポエトリーリーディングも行ったそうだ。私は観なかったが、ソニック・ユースも2日目ホワイト、3日目はヘヴンでステージを展開。これはアーティストもその気になっているからこそできることだと思うし、フジロックがファンにとってだけでなく、アーティスト自身にとっても夢の空間であることをうかがわせる。


【復活組】
ジェーンズ・アディクションやテレヴィジョンといったヴェテラン勢、クーラ・シェイカー解散から3年を経てクリスピアンが結成したジーヴァス、日本勢ではロックンロール・ジプシーズや四人囃子など、なかなかツボなメンツが揃った。個人的によかったのはテレヴィジョン。生きててよかった(笑)。


【ニューカマー】
私が観たのは、ホワイト・ストライプスとザ・ミュージック。特に後者はアーティストの力量から、オーディエンスの熱狂ぶりから、びっくりさせられっぱなしだった。他にはブラック・レベル・モーターサイクル・クラブなども出演。元ちとせのファルセットヴォイスが、ナマで聴けたのにも感激。





来年のラインナップだが、本来は今年出演するはずだったビョークが、来年のヘッドライナーとして既に内定していると考えていいのだろう。後は今秋から来年にかけて作品をリリースしたり、ツアーをしたりするアーティストが中心になるものと思われる。そして、またいくつかの復活組があるのかな。井上陽水のような、名の知れ渡ったロックな人が出てくれるのも大歓迎だ。








9. トータル そして、来年に向けて

より多くの人を受け入れるためには、会場を別の場所にするか、もしくは今の会場内に新たに敷地を確保するかしなくてはならない。'99以来4年間苗場でやってきて、ここで培ったノウハウもいろいろあるはずだ。新たに会場を求めた場合は、そうしたノウハウはリセットされ、また最初から築き上げなくてはならない。なので、個人的には苗場で続けた方がいいと思っている(苗場に匹敵する広い会場が、他にあるかという問題もあるからなのだけど)。


(国の指定になっているとかそんなような都合などもあって、できるのかどうかわからないが)木を切り崩してスペースを作るとか、ホワイトに渡す橋をもうひとつふたつ架けるとかしないと、今年起こった混雑は解消されない。特にグリーンとホワイトの間を結ぶ林道だが、道の両脇部分をどうにかして活用できないものだろうか(厳しいかな?)。


早割りのようなチケットを安くする仕組みは、来年以降もぜひやってほしい。今年はラインナップ発表前にイープラス限定で行われたが、SMASHの会員であれば時期を問わずに早割り価格で購入可能、という仕組みもあっていいと思う。





















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