Countdown Japan 06/07 12/30-Vol.1 Zazen Boys/Earth Stage







予定時間の10分ほど前、唐突にレッド・ツェッペリンの『The Song Remains The Same』がSEとして流れ出した。ステージに登場したのは、フェスティバルのオーガナイザーであり、ロッキンオンの社長である渋谷陽一だった。今回が4回目となるカウントダウン・ジャパンの歴史を簡潔に振り返りつつ、注意事項を2、3伝える。そしてその渋谷が、カウントダウン・ジャパン創成期から出演してくれ、くるりと共にこのフェスを支えてくれたバンドとして紹介したのが、この日のトップバッターであるZazen Boysだ。





2万人収容とされるアースステージは、まだフェス自体が始まったばかりだというのに、既に満員になろうかというくらい人が集まっていた。そんな中を、メンバーがふらっと登場。「幕張、時には女とまぐわい~♪」という、如何にもという言い回しをする向井。そしてお馴染み、「Matsuri Studioから、Matsuri Sessionをひねり上げてやって参りました、ザゼンボーーイズ!」という口上があって、『Sugar Man』でライヴはスタートした。


向井と吉兼は見た目あまり変わっていないが、ベースの「町田のヤンキー」こと日向は体型が幾分かふっくらしたように見えた。そしてドラムの松下だが、坊主に近い短髪がトレードマークのような人だったはずだが、ここでは髪がボサボサに伸びていた。そして4人4様が繰り出すビートがぶつかり合い、融合し、それが巨大ステージをものともしないスケール感を醸し出していた。私はZazenのライヴをライヴハウスでしか観たことがなかったので、正直このアリーナクラスの会場ではどうなのかな?と少し不安だった。がしかし、それも杞憂だったのだ。


そしてこのバンドの持ち味である、卓越したリフやビート、そしてそれらが一体となる統一感が早くも発揮される。『Maboroshi In My Blood』での、炸裂する怒涛のパワフルビート。『Himitsu Girls Top Secret』の、電撃のイントロ。『Ikasama Love』中盤での4人揃ったビートの連打は冷たい狂気を孕み、場内を異様な空気に変えてしまった。いつ終わるとも知れぬ延々としたビートの連打は、誰が指示するわけでもなくまた元の演奏へと切り替わった。私はコントロールしているのは間違いなく向井だろうと思っていたのだが、向井が明確な指示を出すのを確認することはできなかった。ほんとうに、阿吽の呼吸だけでやっているのだろうか。





今回のライヴで、私がびっくりしたのは「カシオマン」こと吉兼の存在感だった。巨漢ドラマーの松下、トリッキーなベースプレイの日向、そして向井と、クセ者揃いのバンドにあって、見た目小柄で特にイケメンでもなく、派手なアクションがあるわけでもない吉兼は、誰がどう見ても「第四の男」だった。ところが、そのギターリフの存在感は向井のそれを上回っていた。ほぼ直立不動でわずかに首を動かすさまは、まるでバケットヘッドのようだったが、小柄なはずなのに大地にしっかりと足がついているように見えた。そして吉兼がこの状態なので、バンドとしての結束及び統一感は、より強固なものになっている。


『Cold Beat』で延々と繰り広げられる変拍子リズム、そしてイントロにキーボードを導入し、松下の乾いたドラムが追随する『Friday Night』。ここで見せ場を作るのは吉兼で、ギターを抱えながら軽やかにステップを踏んでみせる。続く『Riff Man』では4人の力量が正面からぶつかり合うバトル状態になり、中盤にはツェッペリンの『The Immigrant Song』のリフが織り交ぜられる。しかし、この日のライヴを観て思ったのは、サウンドこそ断片的にツェッペリンのテイストが見られるものの、ライヴバンドとしてのたたずまいはむしろクリームに近いものがあると感じた。


ラストは、映画「真夜中の野次さん喜多さん」にも使われていた『半透明少女関係』だ。祭囃子のようなリズム感がどんどんエスカレートし、やがてほんとうにお祭りのような状態に。「ワッショイ!ワッショイ!」「ええじゃないか♪ええじゃないか♪」~というノリを向井が自らけしかけ、場内もそれにノセられて呼応し、もう何でもアリのような、感覚が麻痺してしまうような錯覚に襲われてしまった。演奏を終えると4人がステージ前方に出て横一列に並び、きちっと挨拶をしてくれた。





海外のフェスでは、序盤に出てくるのは新人かもしくはキャリアの浅いアーティストであることが多いと思われる。しかし日本のフェスでは、オープニングを務めるアーティストの役目はかなり重要なものになっていると感じている。主催者側がこの日のトップにZazenを抜擢したのも、そういう意味が強く込められていると思っている。そしてZazenは、その役目を充分過ぎるほどにやり切ってくれた。1日が始まったばかりとは思えない、なんとも贅沢なライヴだった。




(2007.1.3.)















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