人間なんて宇宙の中で考えればほんのちっぽけな存在だし、人の一生なんて、今までかけめぐってきた宇宙のなりわいの中からすれば、ほんのまばたきする一瞬のようなものかもしれない。
人間の存在がいかにちっぽけであることか、ということを、他ならぬ同じ人間の力によって痛感させられることがある。
私はなんのためにロックを聴いているのか。
それはいろいろあるのだが、中でも大きな要素として、アーティストが放つ、壮絶にして妖しいばかりに美しい世界をまざまざと見せ付けられ、自分がいかに小さく、そして宇宙がどれだけ広大で無限に広がっているのかを思い知らされる・・・という瞬間に出会いたいがためではないか、と思うことがある。
レッド・ツェッペリンの『Stairway To Heaven』が、
デヴィッド・ボウイの『Walsawa』が、
テレヴィジョンの『Marquee Moon』が、
パブリック・イメージ・リミテッドの『For Enclosed Walls』が、
プリンスの『Adore』が、
ナイン・インチ・ネイルズの『La Mer』が、
・・・世に産み落とされ、スピーカーから流れ、外部と融合を果たした瞬間に生じる化学反応。そして伝導される波動。
私はこの瞬間を「ロックの果て」と呼んでいる。
『勝訴ストリップ』は、昨年の夏にはもう完成していたという。プロモーションのため、本人が精力的にメディアに登場しては全曲を解説している。シングルカットされた『本能』『ギブス』『罪と罰』が収録されることも事前に分かっていた。
結構な情報量を、私たちはリリース前に受け取っていたはずだ。
なのに、なのに・・・。
よもや、ここまで凄まじいアルバムだとは思いもしなかった。
ここまで激しくも美しい「音」が流れ出てこようとは、思いもしなかった。
アルバム全体を貫くこの緊張感は何だ。
そして、私の中から溢れ出るこの感動は何だというのだ。
まるで生物の生き死にするさまが、
まるで時間のよどみなく流れていくさまが、
まるで宇宙が終末へと向かっているさまが、
この銀色の円盤の中に封印されているようではないか。
この「音」と向き合う、ちっぽけな自分がいる。
その向こうには、椎名林檎という大きくも小さい存在が。
この壮大な宇宙観を創造し得た彼女も、私たちと同じちっぽけな存在なのだ。
ここには「ロックの果て」がある。
今後私は、日本人アーティストの発するロックに、これ以上のものを求めない。