そりゃそうだよなあ。今日びジェフ・ベックの新作を大々的に取り扱うよりも、クーラ・シェイカーやブラーなどのの新作が出た!と大騒ぎしてる方が音楽雑誌の売り上げ部数も伸びるってもんだ。
では、ジェフ・ベックは老いさらばえてしまったのか。過去の遺産で食いつないでいる老兵なのか。世捨て人になって世を儚んでいるのか。何をやっても「ジェフ・ベックだから」という、特別扱いされる仙人になってしまったのか?
・・・その答えは、このアルバムの中にある。
この実質10年ぶりのオリジナル新作『Who Else !』は、ジェフ・ベックが如何なるミュージシャンかを知る人にとって、その想像をはるかに上回る衝撃的な作品だ。10年という、ほとんどの人にとって決して短くはない時間を私たちは待ったわけだが、1曲目の『What Mama Said』の疾走感溢れるギターノイズがスピーカーから流れてきたとたん、10年の歳月なんて、もうどうでもよくなってしまった。
いったい何なのだ、このスピード感は。
いったい何なのだ、この緊張感は。
いったい何なのだ、この熱の高さは。
いったい何だというのだ、この躍動感は。
エリック・クラプトンはギタリストからヴォーカリストへと転身を遂げて器用に売り上げを伸ばし、今やグラミーの常連となった。ジミー・ペイジは、再びロバート・プラントと組んだことで、ようやく過去の呪縛を振り払おうとしている(それぞれ悪いとは言ってませんよ)。なのに、ジェフ・ベックは、ベックだけは、新たなパートナーとの劇的な出会いがあったわけでもなく、極度のスランプや絶望に陥ったわけでもなく、今までと同じようにギターオンリーで世界に対して、仕掛けてきた。勝負してきた。挑戦してきた。こんな嬉しいことがあるだろうか。こんな驚異的なことがあるだろうか。
今作は、もともとのルーツの1つでもあるブルースはもとより、今や時代のキーともなりつつあるテクノへの接近が感じられる作品だが、それが、少しもひとりよがりになっていない。自己内部に完結した密閉的な音になってない。むしろ、その逆だ。殺人ギターから発せられる音色、ひたすら開放的で、ひたすらパワフルで、そしてひたすら熱いのだ。
10年前の『Guitarshop』が出たときもそうだったが、ギターインストという自らのスタイルを持続させ、それでいてこれだけの現役度の高い、密度の濃い作品を世に出し、私たちに問うている。
そして、もうすぐ私たちは本物を見ることができる。
超絶したギタープレイを目の当たりにすることができる。
このことに、胸踊らずにいられるか。
このことに、興奮せずにいられるか。
ジェフ・ベックは、伝説の中に眠る人ではない。
1999年を現在進行形で突っ走り続ける、旬の人なのだ。
(99.3.15.)