Rage Against The Machine
=レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン=






 レッド・ツェッペリンは、そのライヴパフォーマーとしてピークにあったと思われる71年、72年に相次いで来日し、武道館を、大阪フェスティヴァルホールを揺るがした。そのライヴは今でも語り草となっており、同時代で体験できなかった私などは死ぬほど悔しい思いをしている。同じようにツェッペリンを追体験した世代によって(もちろんライヴを体験した人たちや同時代を生きた人たちもそうだけど)、このライヴは神格化され、日本の音楽シーンにおけるツッェッペリンのステータスは絶対的なものになった。


 ザ・フーは、『Tommy』や『Who's Next』等、ロック史上に残る傑作アルバムを輩出する一方で、ワイト島フェスティバルやウッドストックで強烈なパフォーマンスを見せつけていたが、こんにちまで日本におけるバンドに対する評価は恐ろしいほどに低い。その理由はただ1つ、彼らが日本でライヴをしていないことに他ならない。かくいう私も、次々にリイシュー発売されるボーナストラック付きのオリジナルアルバムやライヴアルバムを聴いたり、ライヴビデオを観たりして、そこから想像力を働かせるのが精一杯であり、彼らの真の凄さには触れていないし体感もできない。


 私にとって最も重要で最も切実な90'sのバンドといったらパール・ジャムだ。95年の武道館公演は今でもはっきり覚えている。赤く燃える炎の玉のような1曲1曲が絨毯爆撃のようにこれでもかこれでもかと叩きこまれた。バンドと1万人のオーディエンスが1つになった。最近は椅子のある会場とオールスタンディングの会場とでのライヴのあり方、楽しみ方などについての論議を見かけることがあるが、パール・ジャムのライヴはそんなものはまるごと飲み込んでしまっていた。関係ないのだ。連中にそんなことは。


 ずいぶん前フリが長くなったが、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンは私の中に占めるパール・ジャムのポジションをおびやかしつつある90'sのバンドであり、ツェッペリンの武道館公演やザ・フーの絶頂期のライヴを観て打ちのめされたであろう人たちと同じように、私たちも苗場の山中にて彼らに打ちのめされるに違いないのだ。2年前に天神山で彼らに打ちのめされたのと同じように。


 激しい横殴りの雨。吹きすさぶ風。ぬかるむ足元。今思い出してもあの時の疲労感がまざまざとよみがえってくる。フジ・ロック・フェスティバル97。もちろんその当時はそのときの状況を冷静に振り返る余裕などあるはずがなく、大変だった、よく生きて帰って来れた、とほっとため息をつくのが精一杯だった。しかし、あの異様な状況下に居合わせたことを誇りに思い、堂々と肯定できるのは、あの日あの時あの場所でレイジのライヴを体感した、体感できたことに他ならない。ピート・タウンゼントがギターを叩き壊したときのように、当時はまだリリースされていなかった『Stairway To Heaven/天国への階段』が初めて武道館の天井を突きさ刺したときのように。ザックが「We are Rage Against The Machine from Los Angels」と言い放ち、トム・モレロのgによる『People Of The Sun』のイントロのリフが鳴り響いたそのときこそ、日本における洋楽アーティストのライヴ・パフォーマンスに新たな1ページが記された瞬間であったと思う。


 ライヴのグルーヴ感をスタジオ制作のアルバムに持ち込んだバンドは、U2などをはじめ、これまでにもなかったわけではない。が、やはりレイジは図抜けている。『Bombtrack』の、『Killing In The Name』の、『People Of The Sun』の、『Bulls On Parade』の、あのイントロが流れた瞬間の全身に走る衝撃といったらない。心臓が早鐘を鳴らす。血液の循環が速度を増す。指先のすみずみまでもが躍動してくる。もし私が今、自分が日々生活するテーマ曲を選ぶとしたら、『People Of The Sun』か『Bulls On Parade』のどちらかに決めるだろう。


 1月には死刑囚擁護のチャリティコンサートに急遽出演し(ボブ・ディランが殺人の罪を着せられたボクサーの無実を訴える『Hurricane』という曲を書いていたのを彷彿とさせる)、6月には最早恒例となりつつあるチベタンへも出演。彼らの活動に政治性が色濃いのは最早周知の事実だが、それは99年になっても相変わらずだ。ニューアルバムの発表がどんどん先延ばしになってしまい、フジロック99に間に合わなかったのは残念ではあるが、それでも今回のフジロックで何曲かは披露してくれるのでは、という楽しみもある。1月のときは3曲、チベタンやウッドストック99でも新曲を演奏している。


 彼らの音楽に垣間見ることのできる、愚直なまでのひたむきさ。俺たちはマジなんだぜ、ということを他者に対してきっぱりと叩きつける圧倒性。彼らの音楽を聴き、彼らのライヴを観ても何も思わず、何も感じない人がもしいるとすれば、私はその人とは生涯理解しえないだろう。




(99.7.25.)
















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