The Jam Discography　Compilation Album

　ジャムの魅力はアルバムだけでは掴み切れない。シングルにこだわり続けたバンドであるからこそ、このベスト盤は単なる寄せ集めではない重要な意味合いを帯びている。曲はほぼ年代順に配置され、アルバム未収録のカップリング曲も収録。別バージョン、別テイクも多数。CDは1枚もので21曲だが、LPは2枚組28曲で発表されていたそうだ。91年に『Greatest Hits』なるベスト盤が発売されているが、収録曲も曲順も本作とほとんど同じで、しかも曲数は少ない。

　92年になぜか再燃したジャム。その気運を一層煽ることになったこのアルバムは、別バージョンや完全未発表曲を多数収録したアイテムだ。更に注目は8曲収録されたカバー曲。ビートルズやフーやスモール･フェイセズはまだしも、なんとジェームズ･ブラウンの『I Got You(I Feel Good)』なんてのもある。ウェラーは最終的にソウルやブラック･ミュージックに傾倒していってジャムを解散させるが、そうした道のりがおぼろげながら把握できるような選曲になっている。『A Solid Bond In Your Heart』はラストシングル候補だったが結局おクラ入りとなり、スタイル･カウンシルで83年11月にシングルヒットを記録することになる。両者を聴き比べるのも面白い。

　90'sに再燃したジャムブームにとどめを刺すライヴアルバム。『Dig The New Breed』とは全くダブらない選曲で構成され、24曲というヴォリュームも凄い。後期のステージにある程度沿っているという配置はトータルとしての完成度を増し、単なる企画ものの域を越えて聴き応えは十分。『David Watts』『Move On Up』という重要カバー曲が含まれているのも嬉しいところ。これを聴くと、ジャムのライヴをナマで体感したかったという思いにかられてしまう。

　ヒット曲集ではなく、アルバムを構成する上で重要要素と成り得ていた曲、そしてファンの間で人気の高かった(と思われる)曲を中心にして編集された裏ベスト盤的アルバム。新たな発掘はないが、こういった企画ものも面白く、それをひとつのアルバムとして成り立たせてしまうことができるのもジャムならではだと思う。

　オリジナルアルバム、シングル、カップリングを年代順に収録した5枚組Boxセットで、ライヴ以外のジャムのキャリアをこのアイテムだけで総括できる。そしてお宝はDisc 5。デモバージョン集なのだが、オリジナルにも未収録のキンクス『Dead End Street』、ビートルズ『Rain』、ベン･E･キング『Stand By Me』などの珠玉のカバー曲を収録。『Extras』で初出だった『A Solid Bond In Your Heart』はジャムとスタカンを橋渡しし、ウェラー自身の全キャリアの上でもターニングポイントに位置している曲で、これがBoxの幕引きをしているというのも心憎い演出だ。

　貴重かつ優れた音源を輩出し続けている、英国の国営放送収録音源のジャム版。Disc 1はデビューした年である77年の音源であり、特に冒頭から4曲は、ファーストアルバム『In The City』のリリース前というタイミング。Disc 2は79年及び81年で、つまりジャムが英国を代表するバンドにのし上がった、ピーク期のものだ。Disc 3は初回限定盤にのみ添付されており、79年12月のレインボーシアターの公演をほぼフル収録している。

　まずはこの豪華ラインナップをご覧あれ。90'sの音楽シーンを彩るアーティストが一同に集結して作られたトリビュートアルバムで、ジャムもといポール･ウェラーが成し遂げてきた"仕事"がどれだけ大きく重く、そして意味のあるものであったかがここに証明されている。原曲に忠実なカバーと、原曲に独自の解釈を施した曲の比率は半々。『To Be Someone』の後にウェラーのセルフカバーによるシークレットトラックが収録されている。リアムの『Carnation』、そしてこのシークレットの両方に絡んでいるスティーヴ･クラドックの活躍ぶりが素晴らしい。