Led Zeppelin Ⅲ レッド・ツェッペリンⅢ

Sales Date:1970.10. 1. Immigrant Song 6. Gallows Pole
Produce:Jimmy Page 2. Friends 7. Tangerine
3. Celebration Day 8. That's The Way
4. Since I've Been Loving You 9. Bron-Y-A Stomp
5. Out On The Tiles 10. Hats Off To (Roy) Harper






英メロディメーカー誌の人気投票のトップは、6年の長きに渡ってビートルズの指定席と化しており、その後をビーチ・ボーイズとローリング・ストーンズが猛追していた。そのビートルズを1位から引きずり降ろしたのは、もちろん我らがツェッペリンである。2枚のアルバムの度肝を抜くテンションの高さと、驚天動地のライヴパフォーマンスがもたらした結果であろう。次のアルバムに対する世の中の期待度が膨らむのも当然のことだった。『Ⅲ』は発売前の予約だけで70万枚を記録したという。もちろん、これまでの2枚のアルバムと同じ路線を期待してのことだ。




バンドの活動そのものは順調に進んでいたものの、実はプレスの評判は必ずしも好意的ではなかった。ブルースの名曲をだいなしにする演奏、感覚が麻痺するほどにクスリをやっていなければ楽しめない音楽・・・など、兎にも角にも叩かれまくった。ジミー・ペイジは、ツェッペリンが単なるハード路線一辺倒の偏執狂ではないことを、今度のアルバムによって証明したかった。『Π』のときとは打って変わって、ペイジはロバート・プラントとウェールズの田舎に引っ込んでのんびりと曲作りを始め、後にジョン・ボーナム、ジョン・ポール・ジョーンズと合流してレコーディングを進めた。




しかし、『Π』から1年のインターバルを経て発表された『Ⅲ』は、『Immigrant Song』で始まり『Celebration Day』で最高潮を迎えるA面部分こそそれまでのハード路線を継承しているものの、B面部分はほとんどフォーク・ロック調で、『Ι』『Π』の流れから聴き手の中に形作られたイメージからすると、これがほんとうにツェッペリンのアルバムなのかと疑いたくなるようなおとなしい、ある意味退屈なたたずまいになっている。




結果、予約枚数の余勢を買ってアルバムは第1位の座を掴んだものの、その後すぐさま凋落。プレスにはCS&Nのできそこないとなじられ、ファンからも拒否反応を示された。プレスに叩かれた汚名を晴らすどころか、今までのツェッペリンを支持してくれたファンまでも敵に回すことになってしまったのだ。ツェッペリンの評論を長きに渡って務めてきた渋谷陽一氏も、初めて『Ⅲ』を聴いたときはそのおとなしさに驚愕し、退屈さと軟弱さを感じたという。こんなアルバムは買うな、という不買運動を起こすことまで考えたそうだ。つまり、それが『Ⅲ』発売当時のロックシーンの気運だったのだろう。




80年代。U2は、デビュー以来貫いてきたストレートでエモーショナルなロックンロールをついに『The Joshua Tree』で昇華させ、シーンの頂点を極めた。しかし、その後に放たれた『Achtung Baby』は、およそそれまでのU2のサウンド、U2のバンドとしてのあり方とは180°ベクトルの異なる作品だった。テクノ路線に走り、道化を装い、仮面をかぶり、言っていることが本心なのかユーモアなのか図りかねるようにまで変貌を遂げてしまった。




同じスタイルを貫き続けること。これはこれでロックバンドが延命するひとつの手法であると思う。がしかし、U2も、そしてツェッペリンも、そうはしなかった。時代と向き合うこと。時代に先んじること。もっと言えば時代を超えることに正面切って挑戦した。○○のような、とか、××に似た、という形容を許さない、まさにU2が新しき時代に生き抜くための、レッド・ツェッペリンが他の何者もが到達し得なかった聖地に向かうための、偉大なる挑戦だった。





























MTVアンプラグド出演から派生し、ツェッペリン解散から15年の歳月を経てジミー・ペイジとロバート・プラントは再びタッグを組んでワールドツアーを敢行した。ツェッペリン時代を思わせるようにライヴパフォーマンスはアドリブ満載。セットリストもほとんど日替わりになったが、それでも必ず毎夜毎夜演奏され続けた、言わばツアーのテーマ曲があった。『Gallows Pole』だ。アコースティックギターで穏やかに始まり、やがてそれがオーケストラと融合して壮大なるシンフォニーへと変貌して行く。『Ⅲ』発表から換算すると実に25年後のことである。





























ロックンロールであり、ハード・ロックであり、アコースティックでもあり、そしてそれら全てが複雑にクロスし、存在していそうで実はどこにも存在していない、まさにツェッペリンにしか成し得ないサウンド。ツェッペリンにしか成し得ないスタイル。そのきっかけ、ターニングポイントともいえる『Ⅲ』。前後の作品があまりにインパクトが強すぎるために地味な印象で敬遠されがちなアルバムだが、ツェッペリンが世紀末の今を持ってしても私たちにリアリティを感じさせる、その謎解きの"鍵"とも言うべきアルバムである。












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