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ペイヴメント(Pavement)@東京ドームシティホール

公開日: : 最終更新日:2023/02/17 Pavement

ペイヴメント(Pavement)@東京ドームシティホール

ドリンク代の支払いがまさかの現金オンリーで、キャッシュレス非対応に驚かされる。そのドリンク交換、長い列に並ぶものの、カウンターまでたどり着いたときにソフトドリンクは全く並ばずに交換できるとされ、仕切りのひどさに打ちのめされる。そうして席についたときは、オープニングアクトのミツメがちょうど始まったときだった。

既にペイヴメントのセッティングがされている中、ステージ前方の狭いスペースに彼らは陣取っていた。ドラム、ベース、ギター、ギター&ヴォーカルの4人組で、ヴォーカル主体というわけでもなく、間奏が長い曲もある。ソフトで爽やかな世界観を基本とするが、急にディストーションを効かせるなど、時にはラウドな方面にシフトする。約30分の演奏を経て、終了。彼らのファンも、会場にいたようだ。

約20分のステージ調整の後、場内が暗転。数分間のSEを経て、向かって右の袖からメンバーが登場する。オープニングがなんとバンドの看板曲『Cut Yout Hair』で、前日とセットリストや曲順を変えてくるとは思ったが、これには意表を突かれた。

メンバー配置は、後方向かって右からパーカッションのボブ・ナスタノビッチ、ドラムのスティーヴ・ウェスト、サポートの女性キーボード。前方は向かって右にギターのスコット・カンバーグ、中央にベースのマーク・イボルド、左にギター&ヴォーカルのスティーヴン・マルクマス。解散前と変わらない、ポジショニングだと思う。バックドロップには横長のスクリーンが設置され、抽象画のような映像がランダムに流れていた。

ボブはタンバリンやカウベルもこなし、そして実はヴォーカルをスティーヴンと二分していた。ステージ上を右に左にと歩き回り、足を止めていることの方が珍しい。スコットはギブソンSGとテレキャスターを使い分け、マークのTシャツは実は蛍光色でライティングによっては発光したように見える。ドラムセットに収まるスティーヴは、そのビートだけでなく実は見た目でも存在感を放っている。

バンドの音楽性の軸になっているのは、もちろんスティーヴン・マルクマスだ。長身だがマイクスタンドの高さを少し低めに設定し、上体をかぶせ気味にして歌っている。リードギターをスコットだけに委ねず、自身でも軋んだリフや長いインプロヴィゼーションを放っていた。この人も頻繁にギターを換えていて、ストラトキャスターやギブソンSGなど、3本か4本を使いこなしていたと思う。

バンド活動の末期はスティーヴンが頭ひとつ抜け出ていたが、この場ではスティーヴンはフロントマンでありながら、1歩引いてほかのメンバーを引き立たせている印象がある。結果、バンドとしてのコンビネーションはより蜜になり、バランスがとれているのだと思う。ボブが好き放題やっていたり、スコットやマークが楽しげにしていたりするのを見るにつけ、こちらまで温かい気持ちにさせられる。

今回の再結成に際し、99年のラストアルバム『Terror Twilight』のデラックスエディションがリリースされている。しかし、セットリストはこのアルバムの曲に集中することなく、キャリア総括バージョンになっている。『Gold Soundz』『Grounded』『Stereo』と、キャッチーな曲は嬉しかったし、本編ラストは『Unfair』からのなんと『Filmore Jive』だった。『Cut Yout Hair』がバンドの表の顔ならば、この曲はよりディープなサイドに位置する曲で、そしてライヴの場で映える曲だ。

アンコールは『 Spit On A Stranger』 で始まり、ヒットチューン『Range Line』も披露され、と、まさにダメ押し状態だった。すべてが終了し、メンバーが袖に捌けた後、スタッフ?がセットリストを大量に持ち出し、フロア前方の客に配っていた。

セットリスト
Cut Your Hair
Trigger Cut
Two States
Father to a Sister of Thought
Harness Your Hopes
Major Leagues
Silence Kid
Black Out
Frontwards
Gold Soundz
Conduit for Sale!
Grounded
Box Elder
Serpentine Pad
We Dance
Stereo
Starlings of the Slipstream
Home
Type Slowly
Date w/ IKEA
Unfair
Fillmore Jive

アンコール
Spit on a Stranger
Summer Babe
Debris Slide
Range Life
Fin

個人的にペイヴメントのライヴを観るのは、今回が4回目になる。初回は96年1月で『Wowee Zowee』のツアーだった。今となっては観たという記憶しかない。次は2010年の再結成時で、単独を観た。こちらも、今やうっすらとしか記憶になく、歯がゆい限り。今回はメンバーの一挙手一投足まで細かく観て、目に焼きつけた。今回の再結成も、恐らく期間限定ではないかと思い、このチャンスを逃さずその場にいられたことを、とても嬉しく思っている。

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