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Mishima: A Life In Four Chapters(1985年)

Mishima: A Life In Four Chapters

三島由紀夫最後の1日を軸にしつつ、三島自身の半生と、三島の3つの作品の映像イメージを挿入させた、複雑な構成の作品になる。

1975年11月25日。三島由紀夫は『豊饒の海』の最終編『天人五衰』の原稿を出版社担当に渡すと、盾の会のメンバー4人と共に自衛隊市ヶ谷駐屯地へ向かう。

少年期は体が弱く、自身は戦地に行くことを望むも、検査を通らなかった。戦後、官僚を経て作家として活動する一方、ボディービルを始め、自衛隊に体験入隊し、盾の会を結成するなど、作家以外の活動も精力的におこなっていた。昨年劇場公開されていた、東大全共闘との対話の場面もあった。

イメージ化された作品は3つ。『金閣寺』、『鏡子の家』、『奔馬(『豊饒の海』第2巻)』だ。『金閣寺』だけは読んでいて、映像はほぼ原作の通りだった。『鏡子の家』には、当時としては結構スキャンダラスな描写があり、『奔馬』には主人公が割腹自決するシーンがあった。劇中劇の様相だが、一部は三島自身とクロスするという、幻想的なシーンになっていた。

そして、いよいよ市ヶ谷駐屯地のシーンになる。総監との面談はあらかじめ予定されていたとのことだが、その途中に突如盾の会の面々が総監を拘束。三島はバルコニーから自衛隊に決起を促す演説をした後、割腹自決を敢行した。

キャストは超豪華だ。三島は緒形拳で、容姿こそさほど似ていないが、演説のシーンは実際の映像とダブって見えるくらいリアリティーを帯びている。三島の祖母は加藤治子、市ヶ谷に向かうクルマを運転していた盾の会会員は三上博史だった。

『金閣寺』編の主人公は坂東八十助(三津五郎)、友人に佐藤浩市、遊女に萬田久子。『鏡子の家』編は、主人公沢田研二のほか、横尾忠則や李麗仙らを確認できる。『奔馬』編は、主人公は永島敏行、ほか誠直也や勝野洋らが出演していた。

監督はポール・シュレイダーという人で、『タクシー・ドライバー』『レイジング・ブル』で脚本を手掛けた人だった。製作総指揮には、フランシス・フォード・コッポラとジョージ・ルーカスが名を連ねている。美術は石岡瑛子が担当していて、金閣寺の黄金のセットは、今年開催された東京都現代美術館での「石岡瑛子展」にて見ることができた。

上記の面々から、かなりのビッグプロジェクトだったと思われる。アメリカでは興行的に惨敗したものの、カンヌ映画祭で授賞するなど話題性は十分だったようだ。かねがね三島作品は国際的と言われていて、洋楽アーティストでは、、ストラングラーズのジャン=ジャック・バーネル、マニック・ストリート・プリーチャーズの面々などが、愛読していることを公言している。

しかし、この映画は日本では劇場公開されていない。遺族の反対や、右翼団体による製作者や出演者への脅迫があったためとされている。現在、輸入盤ではDVD販売されているが、国内盤での発売はない。ワタシは、書籍『三島由紀夫と一九七〇年』に同梱されていたのを観させてもらい、どんな作品なのだろうと長年もやもやしていたのを、ようやく晴らすことができた。

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