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ビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)『世界は少しぼやけている』

公開日: : 最終更新日:2021/10/09 Billie Eilish

Billie Eilish『No Time To Die』

ビリー・アイリッシュのドキュメンタリー映像が、2月26日からアップルTVで公開されている。彼女のファンはもちろん、ファンならずとも必見だ。

映像は、彼女が音楽活動を本格化させた、2018年頃からスタート。合間に、幼少時の写真や映像が組み込まれる。2019年のアルバムリリースから密度が濃くなり、4月のコーチェラ出演、ワールドツアーを経て、2020年2月のグラミー授賞、映画『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』の主題歌作曲と、アーティストとしての活動は輝かしい。これが、彼女にとっては16歳から18歳の出来事だ。

彼女はジャスティン・ビーバーのファンであることを公言しているが、ジャスティンとの接点も継続的に捉えられている。彼が『Bad Guy』のリミックスを手掛ける話から始まり、コーチェラで新曲の歌詞が飛んでしまい落ち込んでいるところに、彼が歌った音源を聴いて元気を取り戻し、そしてついに本人と対面。グラミーを授賞した日には、ビデオ通話で祝福していた。

コーチェラでは、バックステージでケイティ・ペリーとも邂逅。パートナーのが隣にいたが、ビリーはオーランドと認識せず、兄フィニアスに指摘されて悔しがっていた(後でもう1度オーランドと会っていた)。ジャスティンもケイティも、この先10年はめまぐるしくなると彼女に言った。ショウビズの世界でサヴァイヴしてきた人だからこそ言えることだと思った。

オフステージにもカメラが入り、彼女の飾らない姿が明らかになる。ファンの思いには応えたいと思う一方、負傷していた足が悪化してミラノでのライヴを途中キャンセルしようとしたり、ニューヨークのライヴで終演後の(恐らく業界人との)記念撮影から逃げ出そうとしたり、と、自分の意思から始まったはずの音楽活動が自分だけでは制御できなくなっている現実との葛藤が垣間見られる。

そういう彼女を支えるのは、一緒に曲作りをしている兄フィニアス、そして父と母だ。フィニアスはギターとキーボードで共にステージに立つが、両親もツアーに帯同し、ツアーバスで移動する。作中では触れられないが、父も母も俳優で、つまりショウビズ界に身を置いていた。ビリーは学校には通わず、ホームスクールだった。また、自らがチック症であること、ラッパーの彼氏がいたことも、この映像で明らかになっている。結局2人は別れてしまうのだが、急激にブレイクした彼女とは格差ができてしまったのが見え見えだ。

コロナ禍で2020年ワールドツアーはキャンセルせざるをえなくなり、9月に予定されていた来日公演もなくなってしまった。それは、確かに残念だった。ただ、結果的に自宅にとどまる時間が増えたことは、彼女にとってよかったのではと思った。アーティストとして誰もが通る道とは思うが、彼女はまだ若すぎるし、そして危ういと、この映像を見て感じたからだ。

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