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ユリイカ 2017年9月号 特集=ジム・ジャームッシュ ―『ストレンジャー・ザン・パラダイス』から『パターソン』『ギミー・デンジャー』へ―あるいはイギー・ポップ&ザ・ストゥージズ―

ユリイカ 2017年9月号 特集=ジム・ジャームッシュ ―『ストレンジャー・ザン・パラダイス』から『パターソン』『ギミー・デンジャー』へ―あるいはイギー・ポップ&ザ・ストゥージズ―

文芸雑誌「ユリイカ」の2017年9月号で、映画監督のを特集していた。当時、「パターソン」「ギミー・デンジャー」の2本の作品が日本公開されていたのにリンクさせたのだろう。

冒頭がジム・ジャームッシュへのインタビューで、「パターソン」を制作するに至ったエピソードや制作の裏話を披露してくれた。劇中でも主人公パターソンが手にする、ウィリアム・カーロス・ウィリアムズによる詩集を読んでこの街を知り、実際に行ってみて、移民が多くさまざまな人種に溢れていて(確かにそうだった)、それが気に入ったとのことだった。ジャームッシュ本人は、遺伝のため10代の頃から髪が白く、それが原因でいじめられたそうだ。

永瀬正敏のインタビューも、興味深かった。永瀬は「ミステリー・トレイン」「パターソン」の2本に出演していて、後者での永瀬は、終盤で主人公役のアダム・ドライバーと対話する日本人ビジネスマン(風の詩人?)役だった。映像を観たときは、それまでの流れに合っていない、とってつけたようにワタシには思えてしまった。永瀬は、あの役は天使のような存在と言っていて、ああなるほど、それだとしっくりくる。また、ジャームッシュを通じて、とも知り合ったそうだ。

「ミステリー・トレイン」でカンヌ映画祭に行ったときのエピソードは、感動的だ。会場の外で1000人ものファンが待っていて、それを見たジャームッシュが、制作者や役者たちを呼んだ。これだけ待っていてくれるんだから挨拶をしよう、僕らは高いチケットを買って会場に入れる人たちのためじゃなく、そこで待っていてくれる人たちのために映画を作っているんだと言い、用意された車をキャンセルして、歩きながらファンサービスをして帰ったとのことだ。

さて、「ギミー・デンジャー」の方だが、写真家鋤田正義のインタビューを取って、イギーとの仕事や人となりなどを引き出したのはよかった。ジャームッシュのインタビューで、イギーから直々に依頼されたこと、プライベートを暴くドキュメンタリーにはしないよう配慮したことなど、制作のいきさつを知れたのはよかった。ほかの文章は、うーん、正直、あまり入っては来なかった。個人的にイギーおよびの作品はほぼ聴いていて、映像も観られるだけ観て、もちろん「ギミー・デンジャー」も劇場で観た後に読んでいるからかもしれない。

書籍全体の方向性としては、ジャームッシュといえば初期3部作、特に「ストレンジャー・ザン・パラダイス」が秀でているという見方になっていて、そうかあと思った。ワタシには、まだそこまでの断言はできない。というのは、「ミステリー・トレイン」も、「ナイト・オン・ザ・プラネット」も、「デッドマン」も、まだ観ていないからだ。

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