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PANTA自伝 1 歴史からとびだせ

公開日: : 頭脳警察/PANTA ,

PANTA自伝 1 歴史からとびだせ

1989年に刊行され、絶版になっていたの自伝が、21世紀になって加筆された形で復活した。自身の生々しいことばによって綴られ、時代だけでなくソロ活動についてもフォローされていて、読みごたえがあった。

両親や学生時代については、私小説「頭脳警察Episode0」と重複する箇所もあるが、奥さんや息子についてはこの自伝にしか書かれていない。『彼女は革命家』は奥さんをモデルにして書いたとか、息子から若いアーティストを教えられたとか、家庭人としての一面も垣間見ることができる。

注目は、やはり音楽活動にかかるエピソードだ。頭脳警察のラストライヴに際し幻のファーストを600枚自主リリースするが、郵便局で自分で発送処理をしてから夜のライヴに臨んだ。活動当時、JASRACに儲けさせまいと登録しなかったが、登録してもしなくてもJASRAC側の儲けは変わらないとわかり、解散後に登録をしたら毎年億単位で入ってきた。

やりたいことをするために始めた頭脳警察のはずが、最初に過激なイメージがついてしまったがために、やれる音楽の幅が限られてしまったのも、解散の一因とのこと。曲を書いても、これは頭脳警察ではできないなと思うことが途中から増えてきたそうだ。

ソロになり、『16人格』のときは、ティアーズ・フォー・フィアーズも同じことをテーマにしたアルバムをリリースした(PANTAの方が少し早かった)。『』『唇にスパーク』のスウィート路線にファンは反発したが、いい意味でファンを裏切ることもジシャンの使命だ。『クリスタル・ナハト』は、構想10年のソロ集大成で、そこに至るまでに自身を熟成させ、また『マラッカ』のときにはうやむやにしていた情報も、徹底的に調べあげた末に臨んだ。

再発に際して追加されたのが、2001年6月と9月、2008年3月のインタビュー。2001年は頭脳警察再々結成時、2008年はPANTAがさまざまな名義で動き始めた時期で、現在のパンタの活動に直結していると見ていいと思う。インタビュアーとの対談形式になっているが、それまでのようにPANTAが自分で語るスタイルの方がよかったな。

巻末には頭脳警察からソロまでのディスコグラフィーがあり、資料として申し分ない。これを読んで、ワタシは頭脳警察こそひと通り聴いてはいるが、ソロの方は限られた作品だけしか聴いていないと気づかされた。

同梱されたDVDは、1989年3月の新宿パワーステーション公演から、12曲約30分という内容だ。前月に『P.I.S.S.』をリリースした記念ライブなのだが、その時期のPANTA自身のあり方として、ライブの組み立ては頭脳警察の曲の方がしっくりくるとし、このライブでは頭脳警察の曲が演奏されている。ここで手応えを得たのか、翌1990年に頭脳警察を復活させている。

つまりこのライブは、1975年の解散以降10年以上ソロ活動を続けてきたPANTAが再び頭脳警察に戻ろうとしている、ターニングポイントの記録なのだ。当時PANTAは39歳、まだまだ現役度が高く、歌もギターもエネルギッシュだ。

タイトルに『1』とついているということは、この先『2』が発表されることを期待していいのかな。

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