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「カーマイン・ストリート・ギター」を観た

カーマイン・ストリート・ギター

黄金町のジャック&ベティというミニシアターで観たのだが、ほぼ満席だった。年に数回おじゃましている劇場だが、ここまで混雑したのははじめてだ。

ニューヨークのグリニッジ・ビレッジにあるギターショップ、「カーマイン・ストリート・ギター」のドキュメンタリーだ。その名の通りカーマイン通りにあるお店で、職人リックがギターを手作りし販売。修理も請け負っている。店は、リックの母が電話番や会計を担い、弟子のシンディはデザインやウェブ更新を担当している。

ボディの木材は、ニューヨークにある建築廃材を拾ってきて使っていて、つまり無料。しかし、建物に染み込んでいたであろう匂いや味わいをそのまま活かす趣向で、人間らしい温かみを感じる。

ショップには、有名無名のアーティストたちが訪れては、店のギターを買っていったり、自分のギターを持ち込んで修理してもらったりしている。レニー・ケイ、ウィルコのギタリスト、、チャーリー・セクストンなどが姿を見せる。彼らとリックやシンディとの気がねのない会話も、見ていて微笑ましい。

ルー・リードのギターテクだった人は、ルー亡き後関係者がギターの扱いについて色々話していたのを耳にしていた。オークションに出す、博物館に飾る、など。この人は夫人のローリー・アンダーソンに、ルーはそんなことは望んでいないはずだと忠告したそうだ。店内には、ルーが使っていたギターが数本保管されていた。

キルズのギタリストは左手中指の骨に感染してしまって中指が動かせなくなってしまい、中指を使わずに弾くようにしてきた。リックはネックの太いギターを渡し、彼が弾いてみると手や指への負担が減って楽に弾けるようになったそうだ。

ギター制作のシーン、カメラアングルでは、リックが向かって右に立ち、ボディの調整をしたり金具をネジでとめたりしている。シンディは向かって左で椅子に腰掛け、ボディにアートのデザインを施している。2人はお互いに背中を向けていて、おのおのの作業に没頭している。リックとシンディは、親と子いや孫ほどに年が離れているが、師匠と弟子のいい距離感を保っている。

携帯もパソコンも使わないリックに、シンディは「早く21世紀に来たら?」と言う。パンキッシュな身なりとメイクをしている彼女はもろ現代っ子だが、父の影響でもの作りに興味を持ったことやアートスクールでデザインを学んだことなどをリックに伝え、弟子入りを許された。彼女が勤めて5年が経ったのを記念して、彼女の友人とリックがお祝い(ギター型のケーキ)をし、シンディは感激して泣いてしまう。リックは、自分の技術を継いでくれる人をずっと待っていたと言っていた。

上映時間約80分は、劇場公開作品にしてはコンパクトに収まっているが、短いというストレスは感じなかった。じわじわと味わいが湧いてくる、良作だ。

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