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さらば愛しきアウトロー(ネタバレあり)

さらば愛しきアウトロー

1980年代のアメリカ。70代の老人フォレスト・タッカーは銀行強盗をおこない、クルマで逃走。その手口は、銀行員に拳銃を見せるだけだった。逃走中、クルマを直そうとしている女性的ジュエルを助けようとし、彼女を自分のクルマに乗せる。別の日にもタッカーは銀行強盗をおこない、息子と一緒にプライベートで銀行に来ていた刑事ジョンは、タッカーとニアミスしていた。

テレビでは老齢のタッカーを黄昏ギャングと報じ、タッカー逮捕に執念の炎を燃やすジョンは、顔出ししてインタビューに応え、逮捕は時間の問題と牽制する。その後もタッカーは強盗を重ねる一方、ジュエルとの関係を徐々に深めていく。

フォレスト・タッカーは、実在した銀行強盗とのこと。しかし、デジタル化が進んだ現在とは違う1980年代とはいえ、連続強盗はできてしまうものなのか。銀行側は、警戒はしないのだろうか。クルマでの逃走を、警察はなぜ捕らえられないのだろうか。・・・というツッコミを、まずは入れておく。

キャストは、タッカーを、ジュエルをシシー・スベイセク、ジョンをケイシー・アフレック。タッカーには相棒がふたりいて、ダニー・グローバーとが演じている。トム・ウェイツは、老人役とはいえ頭髪真っ白で、すっかり老け込んだ見た目になっていた。

シシー・スベイセクを観るのは「キャリー」以来だが、社会に拒絶されたかのようなキャリーのキャラクターを思うと、人間味に溢れ懐の深い演技には、なんだかほっとしてしまう。なにより、おばあちゃんだけど笑った顔がとても可愛い。ロバート・レッドフォードとのつかず離れずの絶妙な距離感は、大人の恋愛の見本のようだ。

脇を固める役者陣も豪華だが、やはりロバート・レッドフォードに尽きる。タッカーとジュエルが食事しているレストランに、ジョンが夫人を伴って入ってくる。ジョンに気づいたタッカーが、その場から逃げるどころか、ジョンがトイレに行った際に自らも出向き、声をかける場面は秀逸だ。

レッドフォードはこの作品で俳優引退を公言していて、それが宣伝文句にもなっている。ワタシはこの人の作品をわずかしか観ていないが、オマージュが各所にちりばめられているそうだ。終盤、タッカーとジュエルが映画を観る場面があるのだが、もしかしたらレッドフォードが出演していた作品かもしれない。御歳80歳を過ぎてさすがに容姿はシワシワだが、スーツを着こなし誰ひとり傷つけることなく強盗を繰り返し、そこに喜びを見出だしているタッカーは痛快だし、レッドフォードの幕引きを湿っぽくしていない。

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