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ウィリアム・ギブスン『ニューロマンサー』

ウィリアム・ギブスン『ニューロマンサー』

近未来。ケイスは、かつては電脳空間に没入(ジャックイン)して情報を盗み出す凄腕のハッカーだったが、依頼主のブツに手をつけ転売しようとする。それがばれてしまい、制裁として脳神経を焼かれ、ドラッグ漬けになっていた。

あるとき、武装した女性モリィによって、ケイスはアーミテジという男に引き合わせられる。アーミテジは、ケイスのジャックイン能力修復と引き換えに、電脳空間における冬寂(ウィンター・ト)と呼ばれるAIへの侵入を依頼する。

文章は、はっきり言って読みにくい。疾走感に溢れてはいるが、どこまでが電脳空間での攻防でどこからが現実空間でのやりとりなのかが、あまり明確に示されていない。ながらではなく集中して読まないと、今どこにいるのかという位置を掴みにくい。

作者はアメリカ人だが、冒頭でケイスがくすぶっているのは千葉シティで、他にもJALや日立といった日本関連のキーワードがやたらと出てくる。書かれた時期が80年代であることも、そうさせているのかもしれない。

1984年刊行の作品で、電脳/サイバースペースという概念を最初に描いたとされている。『攻殻機動隊』も、映画『マトリックス』3部作も、この作品がなければ生まれなかったと言われている。拡大解釈すれば、『TRON』ミッション:8ミニッツ』『インセプション』もそうだと思うし。

の『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』とその映像化『ブレードランナー』に並ぶ、サイバーパンクの傑作として絶賛されている様子だ。なので、ぜひ映像化を実現してほしい。というか、今までされてこなかったのが不思議だ。

作者ブレイクが脚本を担当した『JM』にもコンセプトの一旦は垣間見られ、先の『』『マトリックス』も、ある意味この作品を映像化したものと言える(『マトリックス』シリーズが3D化されることを、秘かに期待している)。80年代や90年代の映像技術ならともかく、今なら、この世界観を実現できるはずだ。

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