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フィリップ・K・ディック『スキャナー・ダークリー』

フィリップ・K・ディック『スキャナー・ダークリー』

近未来のアメリカを舞台にしたSF小説で、作者は「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」などのフィリップ・K・ディック。近未来といいつつ1990年代だが、執筆されたのは1970年代だった。

「物質D」と呼ばれる強力な麻薬が蔓延するアメリカ。おとり捜査官フレッドは、ボブ・アークターの名で潜入捜査をするうちに、自らも中毒者になってしまう。そんな中、上官はフレッドに、アークターの監視を命じた。

自分で自分を監視するというシチュエーションが、読んでいるとよくわからなくなるが、フレッドも上官も「スクランブル・スーツ」を着ていて、このスーツは瞬間瞬間で異なる人物像を投影し、よって、2人ともお互いのほんとうの姿がわからないという設定になっている。

アークターの自宅には監視カメラがとりつけられ、そこで中毒者の仲間と過ごすアークターと、監視カメラを再生して確認するフレッド。やがて、フレッドは「物質D」による症状が深刻になり、アークターであることがばれ、治療施設への入所を余儀なくされる。施設ではブルースという名前になっていて、以前の記憶がほぼなくなっている状況で幕となる。

アークターにはドナという麻薬の小売り人をする女がいて、2人は、恋人までは行っていないと思われる友人の間柄だ。フレッドが施設に送られる直前のドナのことばを読み取ると、実はドナもおとり捜査官なのではと思わせる(あくまでワタシが感じたことだけど)。

ストーリーが終了すると、著者ディックによるあとがきがある。この人自身、中毒者に混じって共同生活をしていたことがあり、自らも中毒者だったことを明かしている。そして、オーバードーズで亡くなった友人たちの名前を挙げ、彼らを追悼している。この幕引き、すごすぎる。

ディックの小説はいくつか映画化されているが、この作品も実は2006年に劇場公開されていることがわかった。フレッドをキアヌ・リーブス、ドナをウィノナ・ライダーが演じ、実写にアニメーションをクロスさせた特殊映像になっているそうだ。これ、いつかは見なきゃ。

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