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ジェフ・ベック(Jeff Beck)@東京国際フォーラム ホールA 2017年1月30日

公開日: : Jeff Beck ,

ジェフ・ベック(Jeff Beck)@東京国際フォーラム ホールA

ジェフ・の来日公演は3年ぶりと聞き、あれっと思った。去年は物議を醸したクラシック・ロック・アウォードで、おととしはモントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパンで、それぞれ来日しているからだ。つまり全国をまわるツアーは3年ぶりということだが、実はこのところ毎年のように来日してくれている。

定刻より10分近く過ぎたところで客電が落ち、先にバンドメンバーがスタンバイして演奏をはじめる。そして御大が、クリーム色のテレキャスターを弾きながら登場。新譜『Loud Hailer』からの、『The Revolution Will Be Televised』でスタートだ。黒いシャツ姿で胸元を開け、右手首には銀ラメのリストバンドをし、グラサンをかけているジェフ。若々しいというか、なんという現役度の高さだろう。

と、ここで客席の通路から、女性ヴォーカルのロージー・ボーンズがスピーカーを持って歌いながら登場。場内は、度肝を抜かれたというより呆気にとられたようになる。スピーカーの音量は、もっともっとデカくてもよかったなあ。

ロージーはそのまま袖の方に捌けていき、続いてはジェフ定番ナンバーのひとつ『Freeway Jam』に。ここは、やはりジェフのプレイに釘付けになる。ギターはストラトキャスターに交換していて、フィンガーピッキングで魔法のような指使いをし、それが大袈裟でもなく力んでいるようにも見えず、難なくやってしまっているのが、この人のすごさだ。

さて今回のバンドだが、ベースのロンダ・スミスとドラムのジョナサン・ジョセフは、ワタシが前回観た2015年の公演にも帯同している。ロンダはロングヘアーでまんまるのサングラスをかけ、この佇まいだけでダントツにカッコいい。プレイが凄腕なのは言わずもがなだ。ジョナサンは体格こそがっちりしていて一見パワー型だが、躍動感のあるプレイをしつつ、リズムキープもしっかりしている。

そして、今回は更に女性が2人。前述のロージーと、ギターのカーメン・ヴァンデンバーグだ。若き2人を迎えて『Loud Hailer』をレコーディングしリリースしているのが現在のジェフで、85年『Flash』以来の歌ものアルバムに、正直最初は面食らった。しかし何度も繰り返して聴くうち、ジェフが単に機をてらっているのではなく、彼女たちに刺激を受けながら自らのプレイをより研ぎ澄まさせているのだと気づいた。

2人は、アーティストとしてとても素晴らしい体験をしている。はっきり言えば世界的には無名で、それがジェフ・ベックのアルバムに参加したばかりか、こうして海外ツアーにも帯同しているのだから。カーメンはブロンドのショートヘアで、抱えるようにギターを持って弾いている。よく見ると、この人もフィンガーピッキングだ。

一方のロージーだが、うーん、見ていて考えさせられた。ジェフ・ベックのステージに、ヴォーカリストとして立つことの難しさをだ。新譜のようなファンキーでパンキッシュなノリで歌ったり踊ったりはするものの、空回りしている感が否めない。これがスタンディングのライヴハウスならもっとノリノリになるだろうが、椅子席ありの会場で年齢層の高い客を前にしては、やりにくかったのではないだろうか。

ジェフ・ベックのステージでどう歌うかの、ひとつの答えを持っているのが、ロージーと入れ替わりで登場したジミー・ホールだ。85年『Flash』に参加し、2005年と2015年のジェフ来日にも帯同している。『Morning Dew』『A Change Is Gonna Come』というカヴァーナンバーを歌いあげ、「Tokio」を連呼。ブルージーな曲をイケイケのノリでまくしたて、客にアピールするのが、この人のアプローチだ。

『Cause We've Ended As Lovers/哀しみの恋人達』は、ジェフの独壇場だ。ステージは後方右にドラムセットやアンプなどが設置され、ロンダもカーメンも、ドラムセットに寄り添うようにして弾いている。つまり、前の方にはかなりのスペースができているのだが、ジェフはこの空間を優雅に使いながら、弦に指を走らせている。『Beck's Bolero』『Blue Wind』といった定番曲も、風化することなく今の音として鳴っている。

『O.I.L. (Can't Get Enough Of That Sticky)』では、なんと
演奏中にギターをテレキャスターから赤い四角いギターにチェンジ。続く『Scared For The Children』では、『Little Wing』のリフをちらっとだけ弾いた。終盤ではスティーヴィー・ワンダー『Superstition/迷信』をジミーのヴォーカルで。ジミーはブルースハープも吹き、盛り上げにひと役買っていた。

アンコールは、『Goodbye Pork Pie Hat』のイントロから『Brush With The Blues』へ。このパターン、なんだか懐かしい。そして、の『A Day In The Life』へ。この曲もジェフのライヴでは定番だが、ジェフとこの曲とを結びつけた、去年亡くなったジョージ・マーティンのことが一瞬頭をよぎった。

いったんはメンバー全員が横一列になって礼をし捌けていったものの、すぐさまダブルアンコールに。ジミーのヴォーカルによる『Going Down』だが、曲の中盤からロージーも加わった。これだ、と思った。新譜の曲だけでなく、ソウルフルな曲やブルージーな曲でも、彼女を使えばよかったのだ。

セットリスト
The Revolution Will Be Televised
Freeway Jam
Lonnie On The Move
Live In The Dark
The Ballad Of The Jersey Wives
You Know You Know
Morning Dew
A Change Is Gonna Come
Big Block
Cause We've Ended As Lovers
O.I.L. (Can't Get Enough Of That Sticky)
Thugs Club
Scared For The Children
Beck's Bolero
Blue Wind
Little Brown Bird
Superstition
Right Now
 
Encore 1
Goodbye Pork Pie Hat~Brush With The Blues
A Day In The Life

Encore 2
Going Down

ワタシがはじめてジェフ・ベックを観たのは99年で、当時この人は54歳だった。これが50代のアーティストのライヴパフォーマンスかと驚かされ、以降は驚かされっぱなしである。そして現在のジェフは、50代でも60代でもない、なんと72歳だ。客の年齢層は高かったが、その人たちと比べてもジェフは最年長の部類に入るはずだ。それでエネルギッシュなのだから、若いアーティストたちはもっとやる気を出さなくてはならないと思うし、この人のライヴからエネルギーをもらったワタシたちも、まだまだ頑張れるはずだ。

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