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キング・クリムゾン(King Crimson)@オーチャード・ホール 2015年12月17日

公開日: : King Crimson

キング・クリムゾン(King Crimson)@オーチャード・ホール 2015年12月17日

会場内のあちこちに録音撮影禁止の告知があった。開演直前には女性係員によるアナウンスがあった後、ロバート・フリップが自らアナウンス。撮影や録音するのではなく、目と耳でライヴをエンジョイして、とゆっくりとした英語でしゃべっていた。

この後すぐ、場内が暗転。7人がほぼ同時に登場し、それぞれ持ち場についた。3人のドラマーによるインプロヴィゼーションからバンド演奏にシフトし、恐らくは新曲をメドレー式に3曲ほど演奏したのだと思う。並のバンドなら終盤クライマックスの演奏でもおかしくない緊張感が漂い、あっという間に20分が経過してしまった。

ステージの立ち位置だが、3台のドラムセットが前方に構え、向かって左から右にパット・マステロット、ビル・リーフリン、ギャヴィン・ハリソン。後方ひな壇は左からメル・コリンズ、トニー・レヴィン、ジャッコ・ジャクスジク、そしてロバート・フリップという具合だ。

3人のドラマーだが、ユニゾンは少なく、3人それぞれに役割を担っているようだった。パットはパワー型、ギャヴィンは技巧派、そしてビルはその中間のようなタイプに思えた。統率しているのはパットで、3人は頻繁にアイコンタクトを取っていた。ビルは、曲によってはキーボードもこなしていたようだ。

ジャッコのヴォーカルにはあまりクセがなく、だからこそクリムゾンの曲をキャリアを横断して歌いこなせる。『ポセイドンのめざめ』からの『Peace – An End』のワンコーラスは、なんと日本語で歌っていた。また、この人に課せられた使命の比重はヴォーカルがほとんどかと思いきや、ギター(『宮殿ジャケがプリントされたボディ』)でも結構活躍。『Red』のリードはこの人だった。

トニー・レヴィンはスティック奏者の代表格とも言える人なのだが、こと今回に限っては大半の曲でベースを弾いていた。それは、69~74年ナンバーをこなすには、スティックではなくベースが不可欠だからだと思う。そして、いくつかの曲でコーラスも担っていたのには驚いた。

メル・コリンズは、今回のツアーのキーパーソンだろう。アルト、テナーなど3~4種類のサックスを使いこなし、フルートも吹いていた。69~74年ナンバーはもとより、再結成以降の曲にも新たな生命を注入している。ワタシは、初期ナンバーの再構築に必須だったのはヴォーカリストの方だと思い込んでいたのだが、実はこの人の復帰が大きかったのだと思う。

ロバート・フリップは、例によって椅子に腰掛けながらギターを弾くスタイル。ギターは3本ほど用意されていたが、交換していたかはわからなかった。変質的にして美しいリフはこの人ならではで、ほとんど体を動かすことなく、指先とわずかな腕の動きだけで多種多彩な音色を発している。見た目はかなり老け込んだ印象だが、腕の方は錆び付いていない。

69~74年の曲はもっとレトロ感が漂うかと思ったが、トリプルドラムやサックスなどが組み込まれることで、まるで新曲のように生まれ変わっている。『Epitaph』も、『Easy Money』も、過去20年のクリムゾンでは体験することができなかったナンバーだが、やっと聴けたという喜びよりも、今のメンバーが「攻め」の姿勢で構築している凄さに唸らされる。

一方で、『Pictures Of A City』『Sailor’s Tale』などは、そもそもライヴで聴くことさえ叶わないと思われていた曲で、よくぞ取り上げてくれたと思ってしまう。バンド初期の話題や評価は『宮殿』に集中しがちだが、個人的には後者を収録している『Islands』は好きなアルバムなので、素直に嬉しかった。

その『Sailor’s Tale』のアウトロから穏やかなイントロが流れ出す。ついに『Starless』が放たれるときが来た。10分オーバーの大作は、ヴォーカルがある前半部にはしんみりとさせられ、インプロヴィゼーションが繰り広げられる後半部には圧倒される。ステージのライティングも赤くなり、アルバム『Red』の終局よろしく、メーターがレッドゾーンに達し、なにもかも葬り去ってしまうかのような壮絶な演奏が繰り広げられた。個人的には97年にジョン・ウェットンのソロで聴いていて、それから18年を経てクリムゾン版を聴くことができた。

演奏を終え、メンバーがステージ中央に集まる。トニー・レヴィンがカメラを掲げ、これが写真撮影OKの合図だ。携帯電話を手に取り撮影する客だが、ステージからもトニーがそのさまを撮影している。スタンディング・オベーションがやまない中、本編が終了した。

アンコール。ギャヴィンのドラムで始まり、ビル、パットが加わるという具合。新曲と思われる。続いて壮大な『The Court Of The Crimson King』となり、オーラスはもちろん『21st Century Schizoid Man』だ。中盤のインプロヴィゼーションでは、ここまで比較的黒子に徹していたギャヴィンのドラムソロがあり、その後またバンド演奏に戻るということがあった。メル・コリンズのサックスも冴え渡った。スピード感に溢れ、スリリングで、それでいてビートの一体感がすごい。ライヴで演奏されるための曲だったのだと、改めて思い知らされた。

セットリスト
Radical Action (To Unseat the Hold of Monkey Mind) 1
Melt Down
Radical Action (To Unseat the Hold of Monkey Mind) 2
Level 5
Peace – An End
Epitaph
Red
Pictures Of A City
Hell Hounds Of Krim
The ConstruKction Of Light
A Scarcity Of Miracles
Vrooom
Banshee Legs Bell Hassle
Easy Money
Sailor’s Tale
Starless
アンコール
Devil Dogs Of Tessellation Row
The Court Of The Crimson King
21st Century Schizoid Man

ライヴでは新曲の演奏も多く、近いうちにニューアルバムがリリースされるのではないかと思っている。来年のツアー日程も発表されていて、バンド活動は当分続きそうだ。ロバート・フリップは現在69歳、盟友メル・コリンズは68歳だが、同世代のアーティストが限界値を更新しているように、キング・クリムゾンも前人未到の領域を突き進んでいくに違いない。

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